三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

どうして中村哲が殺されなければならなかったのか

2019年12月04日 | 映画・舞台・コンサート
 国境なき医師団の中村哲が撃たれて死んだ。
 国内で有名なボランティアの尾畠さんと同じように、善意しかない人だった。もし尾畠さんが撃たれて死んだら、我々はどのように感じるだろうか。世の中にそんなひどいことをする人がいるのかと愕然とするだろう。
 中村哲が撃たれて死ななければならない理由など、この世に存在しない。にもかかわらず、彼は撃たれて死んだ。世界が彼を殺したのだ。この世の善意を我々が支えきれていないから、彼は撃たれてしまった。
 中村哲が撃たれて死ぬ世の中は、優しさに欠ける不寛容な世の中だ。愛くるしい子猫が惨たらしく殺されるのを黙ってみている世の中だ。生れたばかりの子供が爆弾で殺される世の中だ。ねじれた脚と乾いた涙だけが残る世の中だ。谷川俊太郎でなくても、中村哲が殺される世の中がどれほど酷い世の中であるかは解る。
 我々は我々自身に問わなければならない。どうして中村哲が殺されなければならなかったのか。