映画「Scary stories to tell in the dark」(邦題「スケアリーストーリーズ 怖い本」)を観た。
https://scarystories.jp/
物語は人を傷つけ、物語は人を癒やすという冒頭のモノローグがその後も何度か繰り返され、本作品のキーワードとなっている。部屋に置かれた書きかけの文章は、眼鏡をかけた主人公が文学少女であり、好んで文章を書くことを示している。このことがストーリーにとって重要であることが後でわかる。
単に怖がらせるだけのホラーではない。過去の言い伝えと目の前で起こる超常現象を通じて、主人公ステラが人間関係や人の死について意識的と無意識的の両面で学び、優しさや強さを体得していく成長物語になっている。
時代は1968年。ベトナム戦争の最中であり、大統領選挙のさなかでもあった。国内は好戦派と反戦派に二分され、舞台となった田舎町では世界の警察としてのアメリカというパラダイムが支配的であり、戦争に行くことが是とされていた。しかしベトナム戦争は1955年に始まったから、1968年当時でも既に13年が経過している。戦争の理不尽さの理解が徐々に広まり、反戦の機運が高まろうとしていた時期でもある。戦争も理不尽ならモンスターも理不尽である。主人公たちには理不尽なものと戦う勇気が試される。
カメラのアングルは洋館の大きさを強調していて、ビデオゲーム「バイオハザード」の冒頭の洋館を思い出した。カメラワークはわかりやすい上に効果的だ。役者陣の演技もとても自然で、パソコンも携帯電話も普及する前の風俗をうまく表現している。
時代背景、言い伝え、子どもたちの行動など、プロットがとてもよくできていて、それなりに楽しめる作品であった。凡百のホラー映画とは一線を画していると言ってもいいのではないかと思う。