日々好日・いちよう

ちょっとした日々の一コマです

堂場瞬一著「虚報」

2012-04-18 | 読書
日曜日に読んだ文庫本、堂場瞬一著「虚報」文春文庫



2009年別冊文芸春秋に連載され、2010年に単行本化
4月初めに文庫本として刊行された。

やり手のベテラン記者と支局から本社に移って来た若手記者
やり手の記者は遊軍としてこれは!と言う事件を追う
「遊軍記者」は記者の中では、憧れのポジション

随分以前にお世話になった記者が地方局から帰り
うれしそうに「遊軍でやれと言われました」と言っていたっけ、
ポジションが決まらないのはダメじゃん・・と思っていたが
名誉ある名前だったようだ。


「虚報」はビニールをかぶり睡眠薬を飲み、
ドアを開け放して数人で自殺する事件が連発する。
ネットで自殺でなく自死を進める大学教授
遊軍記者たちが真相を追う。

日本では年間3万人もが自殺をするが
新聞に大きく取り上げられる事は少ない。
事故死や孤独死は大きく取り上げられるが
「自殺は悪い事だけど、自分で死を選ぶのを大きく取り上げる事がはばかられる」
新聞の共通するスタンスらしい。

ところが大学教授が自殺に手を貸しているかもしれない・・
これって、以前読んだ雫井修介「犯罪小説家」のパクリか?
嫌な予感を感じつつ読み進めると
全く違って来てホッとした。

警察小説やスポーツ小説で売れっ子作家になった
堂場瞬一の勤務先だった新聞社の記者のミステリー
地ならしをし、礎を築き、満を持しての新聞記者の登場(たぶん)
パクリである筈はなく、高見を目指した(はず)

事件記者は毎日がミステリーの世界(たぶん)
人の起こした事件を追い、警察の動きを追い、人の心理を追う。
付け加えて社内の人間関係をかいくぐる。
野太い神経でないと長続きしない仕事だろう。

物語は若手記者の勇み足で追いかけた人の「虚言」を書き
結果「虚報」となって大きな痛手を食う。
それでは終らずにミステリアスな大事件が続き、終息する。


昔の知り合いの記者さん
東京本社にいる頃は建築関係の問合せをしていて
支局に行きましたと家族写真の年賀状を下さった。
力を付けて戻り遊軍になった後の質問は、
鋭い所を付いて来て感心させられたが
多分今はかなりのポジションに付いている事だろう。

事件を追う刑事と同じく、滅私奉公の日々
プライベートとお身体をお大事に。


そうそう「虚報」は堂場瞬一のピカイチの一冊です。
コメント (2)
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