この間のハナガサヌメリははじめて見るイナカヌメリ科の魚だったのですが、今回も私にとっては初めて見る科の魚となる。ヒメキチジ科・ヒメキチジ属の深海性魚類であるヨロイヒメキチジ。
ヒメキチジ属は長らく日本近海には1種だけとされていたが、分類学的な再検討が行われ、日本にはヒメキチジ、ヨロイヒメキチジ、パラオヒメキチジの3種生息することが分かっている。本種は2021年に新種として記載されたものである。なお「ヒメキチジ」という名前ではあるが、キチジとは近縁というわけではないようだ。日本産ヒメキチジ科はヒメキチジ属とバラハイゴチ属の2属からなり、バラハイゴチ属に含まれるバラハイゴチも同様に深海性の魚である。
ヨロイヒメキチジは長らくヒメキチジと混同されてきたものである。一部の書籍などではヒメキチジの種の写真に本種の写真を使っている可能性がある。そのため違いは微妙で、わかりにくいのだが、このヨロイヒメキチジは頭頂棘が長く体長の7.4~11.1%であるという。また生鮮時は尾鰭の色彩もヒメキチジとは異なるので見分けることができる。本種では尾鰭の後方に赤い線があり、尾鰭後縁は白いことによってヒメキチジと見分けられる。ヒメキチジでは尾鰭後縁が幅広く赤く縁どられているので見分けることができる。
ヨロイヒメキチジは駿河湾、熊野灘、土佐湾、沖縄トラフなどに生息する。この個体は日向灘産である。分布域の一覧にはないが、土佐湾~沖縄トラフの間にあるので、普通に分布しているのだろうと思われる。海外では台湾に分布する。底曳網で漁獲される魚であるが、食用となることはほとんどないようである。今回も「深海魚ハンター」さんからの個体。いつも、ありがとうございます。