袋中菴には、作法のひとつとして歴代の住職が伝承してきた「挿花」がある。その華道は、あくまでも仏道にのっとり、仏前に供えた花の残花をもって生けることを第一義に考えた作法として伝わってきた。
袋中菴に伝承された華道を「山階御流」という。その六世家元、賀幡圓定師がよく言っていた「一枝一葉、花を無駄にするなかれ」という、すべての仏の教えがこの言葉に映しだされている。
今回は、花が彩る晩春の風景を「袋中菴 幻の花」写真集より紹介する。
【椿のご馳走】
神仏のお供えには、普通のお菓子はもちろんだが、ときどき花の御馳走があってもよい。花菓子を供え、仏前に座ると、心が和む。
【浮き花】
京の桜の最後は深山から流れてくる桜の浮き花。春がゆくのを惜しみ、曲物に受ける。また、来る年にも出会いますようにとの思いを込めて。
【鴻恩の花】
供養とは先祖の冥福を祈るだけではなく、生かされている自分を知ることでもある。花を供え。仏に語りかけることによって、縁を知り、大きな愛を感じる。彼岸はまさに出会いの日。
【面影の花】
心の相(すがた)を花に託して心中を観察してみるのも楽しい。花が美しいのではない。心が美しければ、花の相も美しく見える。
【花の花】
ワイングラスの中でも、花は喜んで生きる。花を生かす気持ちが、自分を生かす喜びにつながる。
【添う花】
ふれなば落ちなん薄き花びら
花を箱の脇にそっとおく。あなたの純粋な心が寄り添う。
【花まつり】
お釈迦様はルンビニーの花園で生まれた。お釈迦様の誕生を祝い、龍王が空中より香水を注いだ。それにちなみ、千種の花で飾り、小杓で甘茶を。当菴の誕生仏は左手を高く上げている。
山階御流の圓定師は仏の教えを花の相で表現されている。挿花解説は、それぞれの花が圓定師を通し語りかけているようだ。
リポート&写真(複写)/ 渡邉雄二 写真集/ 幻の花 山階御流
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