前回に続き、乙女文楽をもう少し掘り下げて紹介しようと思っているが、そのためにはまず、人形浄瑠璃文楽との根本的な違いを少し説明させていただく。
ご存知、無形文化遺産の「人形浄瑠璃文楽」は、乙女文楽と異なるのが人形遣い演じ手の数。乙女文楽は一人遣いに対し、文楽は三人遣いで人形を操る。さらに、乙女文楽の人形遣いはその名のとおり女性、そして文楽は男性である。この二つが根本的に異なる。
文楽は、写真にあるように首(かしら)と右手を操作する主遣い(おもづかい)と左手を操る左遣い、そして足を操作する足遣いの三人構成で一体の人形を操作する。
乙女文楽は元々文楽から生まれたもので、文楽をより親しみやすくするために、昭和の初期に大阪で誕生。当時は、少女たちが楽しんでいた人形芝居で、現在は、見ての通り女性が一人で操作する伝統芸能として受け継がれている。
乙女文楽は、一人遣い用に工夫された人形を身にまとい芝居を行う。生の身体の動きを、そのまま直接に人形の動きに置き換え動かす。人形の身体と遣い手の頭とに左右一本ずつの細紐で連結させ、遣い手が首をふり頭を動かすことで人形の頭を操作する。手は人形の着物の袂の後ろから遣い手が手を突っ込んで、人形の手を持ち、足は遣い手の膝頭の下に結びつけている。
遣い手の身体への固定の仕方は、大阪では遣い手の二の腕の上部に人形をつけた腕金と呼ぶ碗曲した棒金具をひっかける腕金式が使われている。
演目、演出、音楽は「文楽」と基本的には変わらない。しかし、操る技術面では、三人で操る文楽の繊細な動きに劣らぬ技術水準が求められ、遣い手が代々、切磋琢磨しながら現代に継承されてきた。
乙女文楽の一人遣いは、人形と遣い手の動きがより一体化された形なので、女性ならではの感性が生かされ、しなやかな動きを創り出しているのが特徴で、それが乙女文楽の美しさである。
改めて、乙女文楽の数々の演目をゆるりと鑑賞させていただきたくなる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます