大阪・豊中市にある曹洞宗「梅林寺」のご住職を訪ねた。
このお寺にある『「降魔成道」-菩提樹の下でー』と題した襖絵を見に行くことが目的である。
親しくしている洋画家の伊藤先生の紹介で、水墨画家の篠原貴之さんの個展を阪急百貨店に見に行った。
その折に、篠原さんから「梅林寺」の襖絵のことを伺い、
どうしても見たくなったので梅林寺さんにコンタクトしていただいた。
襖絵としては少し大胆なテーマだが、この絵からお釈迦様の教えを考察するきっかけになれば、
と描かれたのがこの「降魔成道」。この「降魔成道」の場面は仏伝の中でも重要なエピソードの一つで、
インドでは仏教彫刻や壁画にはよく表現されているという。
大きく分けて三つから成り立っている。「誘惑」、「魔軍来襲」、「証言」である。
出家したお釈迦様が6年の苦行を終え菩提樹の下で悟りを開くために瞑想していると
欲界の魔王マーラが娘たちを使い「誘惑」させる場面である。
そして「魔軍来襲」は、マーラが今度は暴力で屈服させようと矢を射ち放つが、
矢が蓮の花と化しお釈迦様の悟りを阻むことはできなかったという話である。
次に打ちのめそうとマーラは、問答で仕掛けていく。
マーラは「おまえには、おれに証言できる過去の善行がなかろう」と迫ったが、
お釈迦様が大地に触れると大地の女神が現れ、「お釈迦様、あなたは過去世で数切れない善行を積まれた。
いまこそ最高にして完全な知恵を成就し仏陀になられる」と証言された。
それを聞いたマーラは慌てうろたえ退散したというエピソードである。
そのストリーを篠原氏が墨で描いたものである。
この奥の間に座っているだけで背筋がピンと伸びる。お釈迦様の姿で、
いまを生きる我々への示唆を分かりやすく表現しているのであろう。
注) 壷坂寺(奈良)には、お釈迦様の誕生から涅槃までの一生を浮き彫りにした10面の石仏がある。
お釈迦様の事蹟のなかで重要な意味をもつ石仏である。
トップの写真は、その第6面の石仏で、菩提樹の下で結跏趺座し右手で大地を指す「触地印」、
つまり「降魔印」を結んで不動の心を示すお釈迦様の姿を中心に、
左右から襲いかかる魔軍、官能的ポーズでせまる3人の女性像が描かれている。
※この記事は、2008年4月の「心と体のなごみブログ」に掲載されたものを加筆し転載
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