この記事は、2011年に、【逸品殿堂】シリーズの第一弾として大阪市平野区にある甲野製作所の取材したものです。
古くから和菓子に使われる"餡子(あんこ)"を炊くのに欠かせない道具として銅版の鍋が使われている。いまも家内工業的な和菓子屋さんの奥に入ると大きな銅鍋がある。餡子炊くには銅鍋というのが定説になっている。銅鍋が使われる一番の理由は、あずき色がでるから。それとあずきのふっくら感が他の鍋とは違う、ということである。和菓子屋さんにとっては銅鍋はなくてはならないものである。
それと天ぷら屋さん、和食割烹などのプロの料理人の道具必須アイテムとして君臨してきた。最近でこそ見なくなったが卵焼きには銅鍋に限る、と言われてきた。さらに炊く料理は、水分をほどよく飛ばしながら食材に味をしみこませるのを得意としている。そのレパートリーは肉じゃがや魚の煮付け、煮豆といった和風のものから、ホトフ、カレー、シチューなどがある。そしてフレンチのソースづくりにも最適とされている。
銅鍋を、昔ながらの手打ちで造り続けているのが大阪市平野区の甲野製作所である。手打ちとは、機械に頼らずに長年培われた技術と勘で仕上げていること。ここ甲野製作所は、現在3代目の甲野通弘さんと、跡継ぎで4代目になる息子さんの浩正さんのふたり。バブル時までは職人さんが何人かいたのだが、いまは親子二人でがんばっている。
3代目の通弘は現在77歳。銅鍋づくり50年のベテランである。作業は、とにかく叩く。銅版を金床に置いて金槌で叩いて叩いて、また叩く。なんで叩くのか、というと、銅の分子が詰まり硬く頑丈になっていくから、という。銅鍋は、叩いた跡の槌目が特徴である。ここ甲野製作所のものにはどの部分にも槌目が入っている。だから頑丈なのである。出来上がりのものを手に持ったとき、手にズシリとくる。その存在感は鍋の王様の風格を感じさせる。
造る過程は、まず鍋の胴部分の製作、底板の接合、磨き、槌目入れ、柄の接合、スズの塗装といった行程に分かれている。そして銅を火にあぶり軟らかくして焼きいれをする。鍋を造るのには、一枚モノの銅版を押し込んで造るものだと思っていたが、胴回りと底板を接合している。接合部が見えないのは、ここでも叩いているわけである。
手造り。手間をかけて造る。鍋の出来が料理を左右することまで頭に入れて造っている。
生産性は低いが、職人の魂が入っている。時代遅れかも知れないが、本物である。たかが鍋、されど鍋。すばらしい逸品に出会った。
古くから和菓子に使われる"餡子(あんこ)"を炊くのに欠かせない道具として銅版の鍋が使われている。いまも家内工業的な和菓子屋さんの奥に入ると大きな銅鍋がある。餡子炊くには銅鍋というのが定説になっている。銅鍋が使われる一番の理由は、あずき色がでるから。それとあずきのふっくら感が他の鍋とは違う、ということである。和菓子屋さんにとっては銅鍋はなくてはならないものである。
それと天ぷら屋さん、和食割烹などのプロの料理人の道具必須アイテムとして君臨してきた。最近でこそ見なくなったが卵焼きには銅鍋に限る、と言われてきた。さらに炊く料理は、水分をほどよく飛ばしながら食材に味をしみこませるのを得意としている。そのレパートリーは肉じゃがや魚の煮付け、煮豆といった和風のものから、ホトフ、カレー、シチューなどがある。そしてフレンチのソースづくりにも最適とされている。
銅鍋を、昔ながらの手打ちで造り続けているのが大阪市平野区の甲野製作所である。手打ちとは、機械に頼らずに長年培われた技術と勘で仕上げていること。ここ甲野製作所は、現在3代目の甲野通弘さんと、跡継ぎで4代目になる息子さんの浩正さんのふたり。バブル時までは職人さんが何人かいたのだが、いまは親子二人でがんばっている。
3代目の通弘は現在77歳。銅鍋づくり50年のベテランである。作業は、とにかく叩く。銅版を金床に置いて金槌で叩いて叩いて、また叩く。なんで叩くのか、というと、銅の分子が詰まり硬く頑丈になっていくから、という。銅鍋は、叩いた跡の槌目が特徴である。ここ甲野製作所のものにはどの部分にも槌目が入っている。だから頑丈なのである。出来上がりのものを手に持ったとき、手にズシリとくる。その存在感は鍋の王様の風格を感じさせる。
造る過程は、まず鍋の胴部分の製作、底板の接合、磨き、槌目入れ、柄の接合、スズの塗装といった行程に分かれている。そして銅を火にあぶり軟らかくして焼きいれをする。鍋を造るのには、一枚モノの銅版を押し込んで造るものだと思っていたが、胴回りと底板を接合している。接合部が見えないのは、ここでも叩いているわけである。
手造り。手間をかけて造る。鍋の出来が料理を左右することまで頭に入れて造っている。
生産性は低いが、職人の魂が入っている。時代遅れかも知れないが、本物である。たかが鍋、されど鍋。すばらしい逸品に出会った。
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