(はるのちり かいひょうほんの ふかねむり)
気密度の高い現代建築でも、「ほこり」というものは、いつの間にやら降り積もってしまうから不思議だ。この「ほこり」は当然一年中あるが、特別「春の」と指定し、季語としているのは、中国内陸部、砂漠地帯の砂塵が、砂嵐によって空に舞い上がり、偏西風に乗って飛来し、はるか日本に降り注ぐ「黄砂」とも関係がある。
さてこの句、標本だからはっきりとした目的を持って集められた珍しい貝であろうと推測できるが、閑散とした薄暗い博物館のガラスケースのガラスや、テーブルや台に、又は貝標本自体にも、うっすら春の塵がたかっていることも想像される。
作者によると、この貝標本は、最近できた真鶴半島の先端にある「真鶴町立遠藤貝類博物館」で展示しているという。知らなかったよ。
ところで私は、この人間の収集癖には、いつも考えさせられる。それは、美術品だったり、学問的に価値のある頭蓋骨だったり、本だったり、おもちゃだったり、ときにはゴミ屋敷のゴミだったりもする。
つまり収集には、良く言えば生命力を、悪く言えば人間の深~い業のようなものを感ずる。
スノードロップ(ヒガンバナ科、スノードロップ属、マツユキソウ属)