がむしゃらに家業を継ぐや破荷 章子
秋冷や言い出せぬまま海を見る
十三夜神も仏も物ならず 炎火
秋桜耳欠けている白磁かな
新蕎麦や放射線量検査済 歩智
歳時期の栞は今朝の柿落葉
冬近し積まれし薪の匂ひけり 稱子
鐘響く上野界隈枯はちす
鰯雲ふわりとスカーフかけし人 洋子
鳥渡る辛口カレー煮込み中
腐葉土に大根の未来託したる 鼓夢
七竃混み合う地下のティールーム
退院や荒んだ庭に秋の蜘蛛 正太
秋夕焼浴びて石仏多情なり
身に入むや朱肉に深き窪みあり 薪
じゃじゃ馬の買物カート秋日和
会得せり粧わぬ山と粧ふ山 遊石
十三の回忌むかへて月仰ぐ
秋高し音無き機影西空へ 豊春
敗荷や夕日に浮かぶ善光寺
ジェット雲巻雲串刺し飛びぬきぬ 空白
秋の夜に携帯ひかり顔青く
破蓮となりてをりしが凛と立つ 雲水
爽やかに轆轤の壷の立ち上がる