一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

734  枯れ松の虚にいのちや櫨紅葉

2012年10月15日 | 

(かれまつの うろにいのちや はぜもみじ) 

 4トンダンプ2台分の赤松が運び込まれた。太いものは直径60センチ、長さ4メートルもある。これをチェンソーで長さ50センチに伐る。重さはたぶん6~70キロはある。年輪を数えてみると、樹齢62年。私の歳と偶然同じだ。生きていれば、樹高は最低でも10メートルはあったに違いない。もしかすると15メートル近くあったかもしれない。

 枝を落とされて腐ったウロ(洞)に、どこからか飛んできた櫨の実が、落ちて芽吹いて育ったのだ。

リンドウ(竜胆) リンドウ科リンドウ属多年生植物

別名 えやみぐさ(疫病草、瘧草)

 

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733  秋灯や明日の吾に日記書く  誠一郎

2012年10月14日 | 

 ブログを始めて、2年余り経った。俳句ブログといっても、私にとっては日記のようなものだ。そこで掲句、「明日の吾に日記を書く」という。自分がポジティブな人間だと多少の自負はあるが、そんなことは思ってもみなかった。「明日の吾に日記を書く」とは、具体的に一体どういうことなのだろう。

 少なくとも、私は意識して、明日の吾にブログを書いたことは一度もない。しかし、どうであろうと、明日の吾にとって、少なからず有効であるに違いない。

ということは、作者同様、明らかに「明日の吾にブログを書いている」に違いない。

 

ミズヒキ(水引) タデ科ミズヒキ属の多年草

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732  秋水の滾々洶々安曇野に   多留男

2012年10月13日 | 

  長野県の安曇野に、臼井吉見文学館がある。文学館には、「滾々汨々(こんこんいついつ)」と書かれた吉見直筆の書があるそうだ。また、これは吉見の墓碑銘にも刻まれているそうである。

 しかし、多留男先生の句には「滾々洶々(こんこんきょうきょう)」となっている。いずれにしても、尽きることなく盛んにわき出る水が、威勢よく流れる様を言う。

 水の豊かな安曇野にぴったりの言葉であり、このごとく思いや考えや言葉が湧き出ることを、臼井吉見は願ったのだという。

  「肝心の発電は、他人任せにして、電線だけ引っ張って、自分の精神の火を灯そうとしたって駄目なんです。か細くても消えそうでも、精神の世界は、自家発電でなくてはならないのです。」

マツムシソウ(松虫草)  マツムシソウ科マツムシソウ属の越年草

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731 刈田原富士に守らる通学路

2012年10月12日 | 

  私の生まれ育った伊豆半島は、富士山の南にあるので、富士山を自宅から眺めるには、北斜面でなければならないし、北窓からでなければならない。

 ところが我が家は山の南斜面にあったから、富士山は見えなかった。但し、2キロの田んぼの中の通学路からは良く見えた。

 この句は、30年前の初心の句で、少年時代を思い出しての句である。しかし、今では昔の田園風景は消えて、どこにでもあるありふれた住宅地に変わってしまった。更に、高速道路まで作っている。

ポンテデリア(Pontederia)  ミズアオイ科ポンテデリア属の多年草

 

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730  秋風や皆乾き出す家のもの

2012年10月11日 | 

 ホームセンターへ温度計を買いに行って、直径12センチの時計型の、温度と湿度を同時に測る、温度湿度計を買うことにした。

  数種類の中に、「高精度」と書かれているものがあった。ぶら下がっている温度湿度計を一つ一つ見てみると、指している温度も湿度も皆違っていて、笑ってしまった。結局指示温度の平均値に近いものを買うことにして、精度は期待しないことにした。

  快適湿度は、40~65度となっているが、50度を下回ると、皮膚感覚で乾燥を感じるようだ。この句の「もの」には、物と者の二つがあるので、ひらがなにしておいた。いづれにしても、窓という窓を全て解放しているからこそ、ものは乾く。

ホソバシュロソウ 【細葉棕櫚草】 ユリ科シュロソウ属

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729   秋彼岸問い質したきことありて  歩智

2012年10月10日 | 

(あきひがん といただしたき ことありて)

  子供は、親のことを意外に知らないものだ。そう言ってしまうと、親だって子供のことを知らないだろう。夫婦だって同じだろう。大体、自分が自分のことを知らないのだ。

 だから、先にあの世に逝ってしまった人に問い質したいことは、山ほどあるに違いない。ほとんどのことは、あやふやにしておいた方が良いのだが、どうしても知っておきたいことがあるらしい。

 しかし、あの世の人にどんなに詰問しても、結局自問自答する以外、方法はないのだ。

 フシグロセンノウ(節黒仙翁) ナデシコ科センノウ属の多年草。

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728  イタリアン「かげろう」でランチせーへんか

2012年10月09日 | 

エフェメラ(ephemera)というイタリアンレストランが、千歳川沿いの湯河原に近い熱海にある。当然、エフェメラの名前の由来が気になる。調べてみると「カゲロウ」のことである。

 「カゲロウ・蜉蝣」は、水中で半年から3年ほど生き、羽化してトンボのような成虫になり、交尾して産卵して死ぬ。その他にも

「ウスバカゲロウ・薄羽蜉蝣」は、「カゲロウ」とは違う種類で、蟻地獄の成虫。やはりトンボのようである。別名「極楽トンボ」、「神様トンボ」などとも呼ばれるそうである。

 「クサカゲロウ・草蜉蝣」の卵は、ウドンゲ(優曇華)とも呼ばれる。優曇華は、法華経にある、3000年に一度如来と共に咲く伝説上の花のこと。幼虫は、ダニやアブラムシを食べるので、アリマクジゴクと呼ばれる益虫だそうである。

 いづれもカゲロウの成虫は、トンボに似てはいるが飛び方は弱々しい。

ハス(蓮)の実

 

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727  勝った子が負けた子つつく運動会  遊石

2012年10月08日 | 

 今、いじめによる子供たちの自殺が問題になっている。猫が鼠をいたぶるように、どうやら強者が弱者をいじめるのは、人間が本来持っている習性のようである。

 「勝った子が、負けた子をつつく」のは、いじめの範疇に入るだろうか。この程度では、入らないと思うのだが、人によっては悔しがったり恨んだり、場合によっては自殺するかもしれない。

冷やかやいじめた娘来たクラス会  炎火

 同じ句会で、こんな句もあった。数十年振りのクラス会で「あなたには随分いじめられたのよ」と言われたそうである。いじめた本人は、全然覚えておらず、「きっと彼女に気があったんだよ」とからかわれたとか。

 いづれにしても、それが原因で自殺しなくて良かった。生きていてくれて、本当に良かった。

ハギ(萩) マメ科ハギ属、秋の七草の一つ

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726  さればこそ賢者は富まず破蓮  蕪村

2012年10月07日 | 

(さればこそ けんじゃはとまず やれはちす) 

「破蓮、破荷(やれはす、やれはちす)」とは、晩秋になって、青々としていた蓮の葉が破れて殺伐とした光景を言う。蕪村は、享保から天明に活躍した江戸中期の俳人、画家。

さて、この句の「さればこそ」とは、一体何を指すのだろうか。「分かり切ったことじゃないか、だから言ったじゃないか」というような意味合いであることだろうことは分かるのだが、全く具体性がない。又、「賢者は富まず」と「破蓮」との因果関係は、これ如何に。

例えば、一代で築いた資産家の、いわゆる成金の商人が、相場か何かに手を染めて、素寒貧になって、自殺した。又は、二代目のドラ息子が、吉原に通い詰め遊女に現を抜かし、財産を食いつぶした。まあ、その他にも色んな良からぬことが、想像される。

だからこそ、蕪村は「さればこそ」で収めたのであろう。流石である。

トリカブト(鳥兜)  キンポウゲ科トリカブト属

 

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725  秋蝉や男も使ふ化粧水  章子

2012年10月06日 | 

 化粧品を分類すると、洗顔料、化粧水、美容液、ファンデーション、眉墨、頬紅、口紅、グロス、アイライン、アイシャドウ、マスカラ、アイプチ、白粉、マニキュア、ペディキュア。その他に例えば、日焼け止めクリームや広い意味では健康食品だって化粧品だろう。

 私には、名前から推量できるものもあるが、グロスやアイプチなどは、どんなものかさっぱり分からない。世の女性たちは、これらを駆使してしのぎを削っているのだろう。

 さて、男が女性化し、女が男性化する傾向が強まっているらしい。だから、男が化粧水を使ったって少しも不思議ではない。

 作者に聞くと、この時期、空気が乾燥すると夫の肌も乾燥する。したがって化粧水が必要になるのだとか。洗面台には、妻の化粧品があり、それを使えばいいから手間はかからない。

 いづれにしても、自慢にならないだろうが、私はこれら化粧品を使ったことは過去に一度もない。

テンニンソウ(天人草)  シソ科テンニンソウ属の多年草

 

 

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724  コスモスのやうに生きたしケセラセラ   ひさ子

2012年10月05日 | 

「コスモスのように生きたし」とは、どういう意味だろうか。コスモスの外見や、嫋(たおや)かさなどから、想像してもよいが、やはり、花言葉を知る必要がありそうだ。そこで調べてみると

コスモスの花言葉は、「乙女の純真」や「乙女の真心」「乙女の純潔」といった、結婚前の「純潔な乙女」である。

ケ・セラ・セラとは、スペイン語que sera sera。英語ではwhatever will be,will be.

「なるように なるだろう」という意味。そこで、真意を解釈すると全く違う二つがある。

①  人生は、神様が決めていることだから、ジタバタしても始まらない。なるようにしかならない。

②  「為せば成る、為さねば成らぬ、何事も。」つまり、本人の努力次第で、どうにでもなる。

 

さて、そこで世界的に大ヒットした、ドリス・デイの「ケ・セラ・セラ」(←クリックすると、聞くことができます)を聞く必要があるだろう。以下、歌詞の翻訳です。そしてようやく、作者の本当の思いが分かるでしょう。

[1]私がほんの子供だった頃、母に聞いた、
「私はどうなるの? 可愛くなるの?お金持ちになれるの?」
母が言った言葉は
「ケ・セラ、セラ、なるようになるわ;未来のことなんて分からないものよ。

ケ・セラ、セラ!なるようになるわ!」

[2]私が成長して恋に落ちた時に、恋人に聞いたの、
「先には何が待ち構えているの?私たちには来る日も来る日も虹が見えるかしら?」
恋人が言ったのは
「ケ・セラ、セラ、なるようになるさ;未来のことなんて分からないのさ。
 ケ・セラ、セラ!なるようになるさ!」


[3]私が学校に通っていた子供の頃、先生に聞いたの、
「何を勉強したらいいの?絵を描いた方がいいのかしら?歌を歌った方がいいのかしら?」
彼女の賢明なる答えは
「ケ・セラ、セラなるようになるわ;未来のことなんて分からないもの。
 ケ・セラ、セラ!なるようになるわ!」

[4]今は子供たちもできて、彼らは母親に聞くのは、
「私はどうなるの?可愛くなるの?お金持ちになれるの?」
私は優しく言ったの:
「ケ・セラ、セラ、なるようになるわ;未来のことなんて分からないものよ。
 ケ・セラ、セラ!なるようになるわ!」

ツリフネソウ(釣船草、吊舟草) ツリフネソウツリフネソウ 属の一年草

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723  これからも縮むばかりや望の月  貞行

2012年10月04日 | 

 この句の、望の月(満月のこと)が、これから次第に欠けてゆく(縮んでゆく)というだけの意味ならば、当たり前で面白くない。しかし、同時に他の何かも縮んで行くとしたら、想像が膨らむ。

 例えば、人間は生まれた時から、既に死に向かって歩いている訳だが、せいぜい20才位までが成長期。それ以後は、ずーっと死ぬまで退化期であろう。皺は増えるし、身長は小さくなるし、体重だって、まあこれは人によるが、長生きする人の体重は、たいてい減ってゆく。

つまり、満月が欠けてゆくように、成長することなく体が縮んで行くのは、長寿の証拠なのである。だから、そういう自分を、堂々と謳歌したらいいのだ。

シモバシラ(霜)シソ科の多年草

 

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722  2012年9月  岩戸句会

2012年10月03日 | 

秋蝉や男も使う化粧水           章子

眠らむと聴く新涼のアベマリア

 

鉄扉閉ずる大音響や無月なり      薪

カマキリと呼ばれし男の子横綱に

 

杉木立箱根全山ひえびえと       歩智

御婦人のバギーに小犬秋彼岸

 

月青し湯の街黒く鎮まりぬ        遊石

勝った子が負けた子つつく運動会

 

ひやひややいじめた娘来たクラス会  炎火

秋の夜孫とのオセロゲームかな

 

花芒野道に群れて風誘う         豊春

色づきし山間の田に老夫婦

 

糸瓜忌やたっぷりつける化粧水      洋子

虫時雨パエリャの香りたちこめし

         

軒なめて走る江の電鰯雲         稱子

畦道は風の抜け道曼珠沙華

 

縄跳びが叩く地球と鰯雲          雲水

ひやひやと野菜貯蔵の防空壕

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721  鉄扉閉づる大音響や無月なり  薪

2012年10月02日 | 

(てっぴとづる だいおんきょうや むげつなり)

 鉄扉といえば、公団のアパートなど住宅にもありそうだが、「大音響」なのだから大きな古い倉庫などが想像される。

 これに合う季語と言えば、ついつい「月の出、月の入り」とか「日の出、夕日」などが思い付くだろう。しかし、そこに逆の「無月」を取り合わせたのがうまい。

 「無月」は、十五夜の仲秋の名月が、雲に隠れて全く見えないこと。雨で見えないことを「雨月」というが、「無月」は、「雨月」を含んで解釈の幅が広い。

 この句の大音響は、「無月」だからこそ、先日の災禍を残した台風17号の暴風雨さえ想像される。17号は、確かに十五夜の日に、大音響をもって日本列島を縦断した。

サギソウ(鷺草)とは、ラン科ミズトンボ属、又はサギソウ属の湿地性の多年草

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720  運転のカーブにかかると目白の子蝶を銜えて藪に突っ込む  吉野

2012年10月01日 | 

(うんてんの カーブにかかると めじろのこ チョウをくわえて やぶにつっこむ)

 昨日、台風の接近する中、「第61回 源実朝を偲ぶ仲秋の名月伊豆山歌会」が、熱海起雲閣にて開催された。この歌会は、61年間毎年開催されていて、全国から投稿があり、別に参加者による歌会も行われる。今年の選者は、佐々木幸綱、大下一真、水原紫苑、小島なお、の各氏。

 その資料をいただいたので感想を。この短歌は、佐々木幸綱氏の天位の歌。余計なことで、作者に失礼かもしれないが、この歌を俳句ではどうなるかと考えてみた。

 「運転のカーブにかかると」は、単なる説明なので、省略できる。「目白の子」のとは、到底思えないので、「子」もいらないから省略できる。すると、

蝶銜え藪に突っ込む目白かな

となる。ちなみに、「蝶」は春の季語、「目白の子」は春、単に「目白」は秋の季語である。

シオン(紫苑) キク科、シオン属

別名、オニノシコグサ(鬼の醜草)、ジュウゴヤソウ(十五夜草)。

花言葉  「君を忘れず」・「遠方にある人を思う」

「十五夜草」は、分かるが、「鬼の醜草」の由来は、さっぱり分からない。

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