現代日本における自立とは何かを考察した本。
副題に福沢諭吉と夏目漱石に学ぶとあるように明治初期と末期の知識人の考えを引用しながら、現代の若者の自立について述べています。諭吉の「向上心」は、社会が活性化している時のモチベーションとなる。よく学びよく働き、収入を得るのは社会の理想と考えた諭吉に対し、そういう時代を経た後の漱石は、その弊害ばかりが目立つ社会を否定的に捉えている。彼らの時代というのは、昭和の高度成長期からから平成の停滞期に陥った現代の日本人のマインドの変化に近いものがあると著者は考えている。
読んでみて、なかなか面白い考察で納得できる部分も多かった。けれども内田樹の主張に共鳴しているのか、後半はやや引用も多いのが気になった。過去の欧米知識人の考え方を紹介して論理的な考察を試みていますが、結論として日本人が今後どうあるべきなのかが、ややわかりにくい。いろんなメディアで、様々な知識や考え方を吸収した現代日本人にとっては、諭吉や漱石のようなシンプルな考え方で実践するのが難しい状況にあるのかもしれない。現代は様々な考え方に迷う「優柔不断な時代」なのだろう。
そういえば、バブルの頃は「優柔不断な男」は嫌われた時代でした。高度成長期とはそういうシンプルな時代だったので、とにかくよく遊びよく働く人が持て囃されたのだと思います。