中学生の頃、初めてカラヤンのレコードを買った時には、遂に一流の指揮者による演奏を手に入れたと感激したものでした。それはベートーヴェンの交響曲第7番で(「のだめ」でよく聞く音楽です)、家にあったモジュラーステレオで何度も聞いた覚えがあります。レコードには、暗黒の空間に目を瞑って指揮棒を握るカラヤンのポスターがオマケで付いてきて、自分の部屋にカラヤンを飾る喜びを感じたものでした。この本によると、カラヤンは本番のコンサートの前のリハーサルでレコードの為の録音を行っていたそうで、私が聞いた素晴らしい演奏は、ベルリンフィルの能力の80%ほどの力しか発揮していないそうです。今となっては、本番の演奏はどれほど素晴らしかったのか知る由もありませんが。
この本では、カラヤンが戦後の音楽界を席巻し挫折するまでの歴史を紹介しています。若干年代が前後して読みにくい部分がありますが、当時の音楽界と人間関係、その中でカラヤンがいかに帝王として君臨したかがよく判ります。カラヤンに興味のある方には面白い内容だと思いますが、もう少し日本との関わりについて詳細な記述があると良かったかもしれません。