面白いお話になるでしょうか。ダイアの花です。
そう、ダリアの花は、よく夏に花壇に咲いているお花です。この花が好きな人も多いですね。
さて、この物語の主人公、蛍さんはどうでしょうか?
8月、菩提寺に、蛍さん一家は何時もの様にお盆の墓参りにやって来ました。
蝉がじわじわ鳴いています。お寺の近くの小川には緑色の藻が揺らめいて、
そっと覗くと小さな魚や昆虫などの生物がいそうです。
周りの田んぼにも、アマガエルやその他何かしらの生き物が生息しています。
蛍さんの家の大人は、墓参りが済むと座敷で住職さんと話を始めました。
退屈した蛍さんはお寺の外に出て、小川にやって来ると涼しそうな水の中を覗き始めました。
『オタマジャクシがいるかしら?メダカかがいるかもしれない。』
そんな事を思いながら、藻の中に隠れているらしい生き物の姿を探ります。
ドンと足を踏み鳴らして、何かしらの影が藻や水を揺らすのを待つのです。
案の定、すいっと藻の中に動いた影がありました。
蛍さんはその辺に落ちていた木の枝を拾って、その先で影が隠れた辺りの藻をそっと揺らしてみます。
1匹の虫らしい影が藻から出てきました。
はっきりとその生き物の姿が見えると、蛍さんは不思議そうにその虫らしい姿を観察してみるのでした。
『何という虫かしら?』
それが虫だという事が分かっても、蛍さんにはその虫の名前が分かりません。
だって、蛍さんはまだほんの子供なのですから、オタマジャクシやメダカという生き物の名前は分かっても、
この虫の名前までは知らなかったのです。
「それはタガメという虫だよ。」
蛍さんの後ろで声がしました。男の子の声でした。
はっきりとした、どっしりとした、男の子らしい声でした。