Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ダリアの花、44

2017-02-21 17:40:06 | 日記

 「おや、」

男性は酷く衝撃を受けた感じで、顔が相当曇ってしまいました。

稚拙な絵だね。ほんとに君が描いたの?冷たくそんな事を言って、真顔で嫌悪に近い表情を浮かべるのでした。

 「もう少しましな絵が描けないのかねぇ。」

これでは本当に…、と言って男性は手で口を塞ぎました。

男性は目が合った蛍さんの表情に、彼女の祖父と全く同じ様な、困惑して酷く気落ちした感情を読み取ったからでした。

 『危ない、危ない、つい馬鹿正直に言ってしまうところだった。』

男性は苦笑しながら、一生懸命微笑みを浮かべると、愛想よく、

「いやぁ、可愛い絵だね、蛍ちゃんは絵が上手なんだね。」と、心にも無い、言いたくも無いお世辞を言うのでした。

『これこそが追従というものだ!』

これこそが将にそれだな、しかもこんな年端も行かない女の子に自分の方からする事になろうとは、

世の中信じられない事が起こるものだ。そう思うと、何だか自分で自分が可笑しくなってしまいます。

孫の為に、そう思うとこれも世の柵というものなのだ。

男性は相当無理をしている自分の事を思うと自分で褒めたくなるのでした。後でゆっくり自画自賛しよう。

そう思いながら、男性は蛍さんという女の子について、その為人というものを、

2人でゆっくり話せるこの機会に少し知っておこうと考えるのでした。

 『何から話そうかしら。』

そう思って再び地面に書かれた彼女の絵を見てみます。

絵だなと思いました。絵から会話を広げて行こう。そう思って座り込むと、しげしげとその絵を鑑賞してみます。

男性はすぐに嫌気がさしてしまいました。しかし、何かしら感想を述べようと思います。

「とても耐えられない。」

つい口をついて正直な感想が出てしまいます。この酷い絵を描いた子が将来…。

そう思うと、男性は立ち上がり、肩を落としてうな垂れると、酷く沈んだ暗い空気に包まれてしまうのでした。

 


ダリアの花、43

2017-02-21 17:00:58 | 日記

 源の話は続きます。

「そうだよ、父さん、俺だよ。澄も傍にいるからね、後で交代するよ。」

蛍さんは話を、2人が順番に話す事を、言葉の通りそのままに鸚鵡返しに話すのでした。

 「私の順番は来ないの?」

蛍さんが大人2人の話に口を挟むと、2人は困った顔をして見つめ合いましたが、源はにやにや笑うと、

「もう少しこのおじさんとおばさんに話を続けさせてね。」

と彼女に頼むのでした。大きなお兄さんとお姉さんの事だ、自分は小さいのだから仕様が無いかと、

蛍さんは自分の番が来るまで、我慢して好きな事を言うのを待つ事にしました。

 源と澄の2人の話す順番が、そう長く続かない内に先程の消えた男性が帰って来ました。

「やぁ、」

待っていた大人2人に挨拶をして、何だか困ったような笑顔をしています。

「ちょっとお客さんを連れてきてしまってね。」

連れて来たというより、着いて来てしまったんだけど。此処に来た時に丁度向こうも此処に来ててね。

バッタリ顔があってしまったものだから、直ぐに話しかけて来てね、ここは何処だと言うから、

私から説明するより、身内の2人に合わせ方がいいと思ったんだよ。

「君たちも話があるんじゃないかい、お身内同士で直接の方がいいと思ってね。」

そう言って男性は、向こうに待たせてあるからと、指でお客を待たせている所を示し、源と澄に場所を教えるのでした。

 「君は行っちゃだめだよ。おじさんと一緒にいようね。」

そう言われて、蛍さんは男性に足止めされてしまいます。

教えられた2人はすぐにその場所に向かって行ってしまいました。男性と蛍さんの2人が残りました。

 「君は会わない方がいいんだよ。此処ではね。」

男性に言われて、蛍さんは折角の遊びが中断されてしまったので溜息を吐きます。彼女はまた退屈になってしまいました。

「退屈なら、少しおじさんと話をしていようか。」

男性が気を利かせて言います。何を話そうかな、そう言って下を見て蛍さんの描いた絵に気が付きました。