蛍ちゃんは、この私や此処にいるお兄さん、もとい、おじさんの言う事をよく聞いて、
私達が言った通りにもう1度言葉を繰り返すのよ、いいかな、分かったかな。
では、練習しましょう。
「こんにちは。」はい、言ってごらん。
「こんにちは。」蛍さんは言われた通りに繰り返します。
「私は澄(すみ)です。」
「私は澄です。」澄っていうのは、おばさんの名前なの?
おばさんは笑顔でそうだと言います。そして、この横にいるおじさんは源(げん)と言う名前なのよと教えてくれます。
そして、もう1度、言葉を繰り返す練習をしましょうね、と、
「澄は言います、お母さん元気ですか。」と言いました。
蛍さんも同じように言います。「澄は言います、お母さん元気ですか。」
それでいいわ、とても良くできたわよ、上出来上出来と女の人は嬉しそうに褒めてくれるのでした。
蛍さんもとても嬉しくなりました。結構面白い遊びです。
「もうそろそろかな、初めてもいい頃だと思う。」
源がそう言うのを合図に、3人の繰り返し遊びが始まりました。これは蛍さんには、暇つぶしのよい遊びでした。
先ずは源からです。
「源です、お父さん元気そうですね。」蛍さんは繰り返します。
「姪の蛍の口を借りて喋っています。」え、蛍の名前を言うの、自分で自分の名前を言うのは何だか変な感じ。
蛍さんの余計な言葉が入るので、源は苦笑いです。
余計な事は言わないで、僕と、澄の言葉だけを繰り返すんだよ。と蛍さんに注意します。
フーンと、蛍さんは不承不承ですが、こういう決まりの遊びなのだと澄に説明されると、そのルールに従います。
ではもう1度、源は前の言葉を繰り返しました。そして続けて言いました。
「この子を起こさないで、俺と澄の話を聞いてください。」
「俺達の話を信じてね。」