祖父2人が如何やら和やかに談笑し始めた頃、奥の座敷の方では光君が母と祖母にたん瘤の手当てをして貰っていました。
「こんな酷い怪我 、今まで私が見て来てさせた事はないんだよ。」
光君の祖母が言うと、彼の母はしてしまったものはしょうがないでしょうとイライラして祖母に言います。
「お前が来た時に限ってこの子は酷い目に遭うんだね。」
断定したような祖母の言い方に、光君の母はカチンと来ました。
そこで、自分の母にムッとして言い返します。
「別に私のせいではないし、お盆になると揉めるような性格に育てたのはお母さんの方じゃないの。」
じゃあなあに、私が悪いっていうのかい。むかむかして祖母の方も言い返します
「本当にまあ、どうしてあの子に関わりあうと何時も光は酷い目に会うのかねぇ。」
祖母の言葉に光君の母は唇を噛むのでした。
「あの子が悪いんだよ、だから僕、こんなたん瘤が出たんだ。」
光君は甘えたように祖母に訴えます。
「あの子が箒で僕の頭を叩いたんだよ。」
「まぁ、なんて酷い事したんだね、蛍ちゃんは。光、よしよし可哀そうに。」
そう祖母が言うと 、光君の母は腹に据えかねた様に、光!と叫ぶと、
お寺の縁側で寝かされ、たん瘤に濡れ手ぬぐいを当てて冷やしていた光君の頬をバンと平手で打ちました。
その母の勢いが余りに強かったので 、光君は横に吹っ飛び、縁側の端からはずれ外の庭石の上に落ちてしまいました。
ガツン
大きな音に祖母は嫌な予感がしました。
母は息子の言葉にかんかんでしたから、横を向いて知らんぷりを決め込んでいました。
大丈夫かい?祖母が慌てて縁先を覗き込むと、光君はぐったりとして痛さに呻いていました。
「いてて、たん瘤が大きくなったらどうするんだ。」
むかむかした声が下から聞こえて来ます。
その憎まれ口の叩きようを聴いて、光君の祖母はやれやれ孫は大丈夫なようだとほっと安堵しました。