Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ダリアの花、32

2017-02-17 23:56:01 | 日記

 「あのう、そういう言い方をされますと、何だか気が滅入りますので。」

蛍さんの祖父はそう言って、この話はこれでと、自分の家庭の事情を話すのは止めにしようと思います。

「いやいや、亡くなられたとはいえ、それでも沢山のお子さんをお持ちで羨ましい事です。」

「でも、今あなたも言われたように半分以上がもう亡くなりましてね。」

空しいものです、話しても仕様の無い事でした。話した私が悪かったと、蛍さんの祖父は話を切り上げようとします。

「あんたさん、さっきも言ったように、あなたは悪くありません。」

私の物言いが素っ気無かったんでしょう。私の方が悪かったようです。

そういって光君の祖父は蛍さんの祖父の傍に一緒に座り込むと、蛍さんの祖父に申し訳ないと詫びるのでした。

 「実は、家は私が1人っ子、私の子供も1人娘なんです。」

だから、その子供が1人でも亡くなれば家が絶えます。それで我が家では子供大事で今まで来ました。

自分もそうだったし、娘の時もそうでした。

その娘が恋愛結婚しましてね、これが、向こうも1人息子さんでね、2人がどうしてもというんで、

娘は家を出て、最初の子供を内に跡取りに貰うと言う約束にしてあったんです。

それで、今のところ向こうでも家でも、光1人が跡取りなんです。

これであの子がとても大事な子だという事がお分りになったでしょう。あの子の言う事は何でも叶えてやりたいんです。

こう光君の祖父に言われると、蛍さんの祖父は何とも責任重大な話に、相当気が重くなってしまったのでした。

 今迄、目の前の孫の容体を案じて鬱々として来ていたのが、そう酷い事も無いようだと少しほっとして、

向こうの話につられ、家の事をつい話してみたら、相手の孫はかなりの重責を担う貴重な孫であるという、

その事実が蛍さんの祖父の心痛をより深い物にしてしまいました。彼は胸の内に、焦燥感にも似た圧迫感を感じるのでした。

 『具合の悪くなる話だ。』

蛍さんの祖父は酷くげんなりしてしまいました。顔からは血の気が失せて、顔色が白々と白んで来ました。

その時です、本堂の奥、座敷の奥の方向から、光!光!と2回、声は小さくても鋭い声が上がったのです。

2人の祖父は何かしらの異変を感じて、目の前の畳にまだ転がっている青銅色をした鋳物製の燭台を眺めたのでした。


ダリアの花、31

2017-02-17 19:43:16 | 日記

 「それにしても、お孫さんにもしもの事があったら…」

そう光君の祖父は話し出しました。

「そう思うと気が気ではなかったでしょうに、落ち着いておられましたねぇ。」

 光君の祖父は、蛍さんの祖父が孫の事で自分に食って掛かる事もせず、倒れた蛍さんの傍で屈み込み、

彼の孫のみをじーっと見守り続けていた静かな様子が何となく不思議に思えて、その事を蛍さんの祖父に尋ねてみました。

 「ああ、ええ、気が気ではなかったんですよ。」

ただ、駄目なものは駄目で仕方ない事と…、諦める事に慣れたのかもしれません。

そんな事を寂しそうに蛍さんの祖父は言うのでした。

諦める事に慣れた?そんな事があるのかしら、光君の祖父は思います。

 「可愛い孫ですよ、家族の死に慣れるなんて、…。」

そんな事ができるのでしょうか?どうにも不思議です。

「いや、私なんか、もし立場が逆でここに光が寝ていたらと思うと、」

もう、あんたさんの事を叩きつけるどころの騒ぎではないでしょう、

カーッと来て何を言い出すか、何を仕出かすか、自分でも自分が分からないと思いますよ。

 この言葉に、蛍さんの祖父はぎょっとして、恐る恐る相手の顔を覗き込んでみる。

相手の顔は今は一応にこやかな笑顔です。でも、もし向こうの孫に何かあったら、

蛍さんの祖父はその時の事を考えると、今にも血の雨が降りそうな嫌な予感がします。

この先何かあれば、相当な修羅場が待っているのだろうか?

彼は何だか寺での要件を早めに切り上げて、早々に帰宅した方がよいなと感じるのでした。

その前に、少し自分の家の事情を話しておこうかと考えます。

 「いえね、私には子供が7人いたんですよ。その内赤ん坊の頃に2人、成人前後に迄育った子を2人と、

もう4人も先に亡くしていましてね。」

そう蛍さんの祖父が打ち明けると、

「おや、あなたの人生にはそんな酷い事がおありなんですか。

それでは過去に、親不孝なお子さん達を半分以上もお持ちになっていたんですね。」

と光君の祖父は言葉を返す。

 何だか、あまり嬉しくない物言いだと、蛍さんの祖父は思う。

大抵はお気の毒に、子供さんも可愛そうに、あなたもお寂しい事ですね、など、

お悔やみの言葉が返ってくるのが普通なのに、何だか、自分がとても不幸な気がしてくる。

亡くなった子供達も、酷く悪い子達だと言われているような気がしてならない。

 


ダリアの花、30

2017-02-17 16:38:43 | 日記

 「お前、光だって自分の方が悪い事は分かっているんだよ、甘えて冗談を言っただけじゃないの。」

子供の言う事に本気になって。と祖母が娘に孫の事を取り成すと、

「そうだよ、お母さん冗談も通じないのか。」

と、光君が頭の痛い所に手をやりながらよろよろ起き上がって来ました。

祖母はその立ち上がった孫の顔を一目見るなり、

「あっ!」

と短い叫び声を上げると絶句しました。そして急いで傍らで渋い顔でそっぽを向いていた自分の娘の手を引きました。

その祖母の手に引かれ、何よと母は息子の顔をふいっと見ました。

「あっ、光!」

光君の母も叫んで絶句してしまいました。

 一瞬恐怖にも似た衝撃が母の心に走りました。

間違いであって欲しい、何事も無い正常な状態であって欲しいと真に願いつつ、

彼女はもう1度息子の顔を食い入るように眺めてみます。

しかし、母や祖母の見た事は間違いではなく、光君の黒目はぐるぐると揺れていたのでした。

 「何さ。」

祖母と母の常ではない様子に、妙な気配を感じて光君は聞いてみます。

2人はどちらが何を言うとも無く、ちょっとお互いにお互いの顔を窺ってみます。

うんうんと祖母と母は頷き合うと、何でもないよ、と祖母が優しく言います。

 まあまあ、お前上がって静かに寝ておいで、いい子だから。

祖母の言葉に同調するように、母もそうそうと元気なく言葉少なです。

母は息子が縁先に上がって来るのを、手を差し伸べて引っ張り上げると、優しく抱き上げてそっと寝かせます。

 「何だい、何時もは抱っこも嫌がるくせに、こんな時だけ。」

彼がそんな憎まれ口を母に叩いても、依然、母の方は黙として目を伏せています。

母は瞼に熱い物が込み上げて来ます。息子から顔を背けると、ついっと立ち上がりました。

 お父さんの方を見てくる、お母さんここはお願いねと震え声で言うと、

涙が零れ落ちない内に、庭に面した縁側を本殿の方へと急ぐのでした。


日用品です

2017-02-17 08:58:08 | 日記

 日用雑貨ですね、洗濯洗剤や柔軟剤、歯磨き粉、シャンプー、リンス、など、気に入った物をリピート買いします。

時に香り等の気に入った季節商品を買うので、次に使う時に商品自体が無くて、リピートできない場合があります。

そんな時は非常に残念に思います。

 また、慣れた商品が廃番になった時など、次にどうしようかと途方に暮れた時がありました。

そんな時、現代的ですね、検索の口コミ欄を見て商品を購入して使用してみました。

良かったです。同じ品が無くなって困っていた人の意見、とても参考になりました。

私もその代替商品が気に入り、今はリピートしています。「類は類を呼ぶ」を実感した口コミ欄でした。