「あなた達、どうしてこんな所に寄り集まっているんです。」
そんな男の人の太い声がして、皆一様に、いやぁ、これはこれは、と苦笑いに近い笑顔を浮かべます。
「遂に大御所さんのお出ましですね。」
そんな事を源が言います。澄もそわそわと、悪戯っぽい瞳をして何処かへ行ってしまいたそうです。
急に辺りをうろうろとうろつき始めました。
「ご先祖様を供養する日なのよ。どうしてこんな所へ来ているんです。」
蛍さんは声の主を振り返って見てみました。なんとそれはこのお寺のご住職さんだったのです。
『あれ?お寺さんまでこんな所に。』蛍さんの父は、どうやらこれは自分の夢の世界なのではないかと思い始めました。
私は夢を見ているんだな。これは現実世界の夢の中だと思っていたが、夢の中の夢の世界に迷い込んでいるのだ。
そう思ったりします。『まさかお寺さんまで亡くなるなんて…。』一気に4人も現実世界で亡くなるなんて事、
そんな偶然はありっこ無いと思うのでした。それでも彼は聞いてみます。
「いやぁ、お寺さん、あんたさんまでまさか亡くなったなんて事はないですよね。」
微笑みながら問いかけて来る蛍さんの父に、住職さんは顔をしかめます。
縁起でもない事を言うんですね、未だ分からないの?、この世界は現実にある世界なんですよ。
本来なら生きている人間は此処には来ないんです。そこへあなたが来ているだけです。
あなた達のご兄弟は如何なっているのかと、源と澄に話しかけて事情を聴きます。
住職さんは2人から、蛍さんの父の此処での取り乱した様子を聞くと、殆ど彼への説明は諦めてしまいました。
「もう、あなたも、いい加減に戻ってきてください。」
住職さんは今度は光君の祖父の方に言います。
「あなたまで、如何して此処で長居しているんです。お孫さんはもう戻っているんでしょう。」
あちらにもこちらにも人が倒れ込んで、今年のお盆はどうなっているんでしょう。
どうもおかしいと思って此処までやって来てみれば、こんなにご先祖様と子孫が寄り集まってワイワイと、
これから何か始めるつもりなんですか。そう言って、光君の祖父には、
あの子はあの子に呼ばれたんでしょう?落ちていた灯篭があの子の供養の物でしたからなぁ。と言います。