Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ダリアの花、114

2017-04-01 19:54:45 | 日記

 それでも彼は妹の澄さんに、

「お前ちゃんと向こうのご両親のお世話をしなければ、それが嫁の本来の務めだろう。」と、

夫の光さんと仲良く、その御両親にも可愛がられるように努力しなければいけないよ。と諭すのでした。

 これでは、これ以上嫁の事を悪く言えばこちらの部が悪いと、光さんの父は黙り込み、

もう息子夫婦には家に帰るようにと言うと、家に帰って母さんをここへ寄こしてくれないかと頼みます。

「私は今食慾が無いから、お昼は後でいいと言っていたと伝えてくれ。」

そう言って、本堂で待っているからと息子夫婦を家に帰すのでした。

 息子達が家に帰ってしまうと、その場に残った嫁の兄は妹の舅に向かって、

「こんな言を言っては失礼だとは思うのですが。」と、

「私にすれば可愛いい妹です。末っ子なので確かに我が儘な面がありますが、如何か末永く可愛がってやってください。」

宜しくお願い致しますと、やや強張った顔で少し語気強くなりましたが、丁寧にお願いするのでした。

 舅も不承不承ですが、ああと、確かにあの子はかなり我が儘で通っていますからなと、

渋い顔をしながらも、分かりましたと承諾するしかありません。

 兄は先方にこう渋られながら承諾されると、やはりなと妹に対しても思い当たる事はあるのですが、

何しろ自分には実の妹の事、あまり舅夫婦と合わないようなら若夫婦の別居も致し方ないのかもしれないと、

内心それなりの覚悟はしておくのでした。

 さて、光君の祖父は本堂に1人となりました。一体如何なっているのかと考えてみるのですが、埒があきません。

やがてやって来た妻に自分の身の上を赤裸々に打ち明けてみますが、妻にしても半信半疑、夫のいう事を鵜呑みにもできません。

まぁ、兎に角家に帰ってはと、息子も興奮状態で、自分はなだめて来たが如何している事やらと、家の事が気掛かりな様子です。

そして、

「あなたにすると息子の光が生き残っていて嬉しいでしょうが、娘が生きていて、娘の生んだ男の子が孫として居るなんて、」

と、私にはそちらの世界の方がうらやましい気がします。と言うのでした。

妻には妻の、夫には夫の、好ましい世界というのがあるのかもしれません。

「息子が生きていたって、こんな事になっているのなら、案外嬉しい世界でもないのかもしれないよ。」

そう夫は言って、妻に勧められるままに、兎に角この世界の家へ行ってみることにしました。

 


ダリアの花、113

2017-04-01 19:09:04 | 日記

 ところが、光さんが振り返ってみた父の顔は酷く蒼ざめていました。

今にも倒れてしまいそうなくらいに酷く動揺しています。

「如何かしたの父さん。」

息子にそう声を掛けられて、父はやっと、いやとだけ言うと、そこの敷居の上にへなへなと腰を落としてしまいました。

 如何したというのでしょう、暑気当たりかなと光さんは思います。

「お父さん、大丈夫ですか?」

やって来たお嫁さんの澄さんも心配して声をかけました。すると座り込んだ父は、澄さんに酷く嫌そうな顔を向けると、

「どうしてまた家の嫁がお前なんだい。」

家の子と結婚するなんてどういう神経をしているんだね。と顔付き険しく語気荒く言うと、

酷くがっくりした様子で頭を抱え込んでしまいました。父はショックを受けたというより失望したという感じです。

実はあの世界にいた澄さんは、皆が相当手を焼く女性だったのでした。それは生前からだったかもしれません。

 「父さん、随分だね、僕の選んだ人に、父さんこそ如何いう神経なんだ。」

結婚した直後に比べたら随分良くなって来たと思っていたのに、

今のその態度は何だい、また元に戻っているじゃないかと、光さんは怒り出しました。

「しかし、おまえ、その子だけは止めた方が良かったんじゃないか。」

問題の多い子だよと、世間でもこの寺でも皆知っている事だ。

その子の本性を、お前だけが気が付かないだけなんじゃないかなぁと、父は深刻に顔を曇らせます。

 当然父のこの言葉に、光さんは怒り心頭に発するのでした。烈火の如くに怒りました。

「今までだって父さんの澄さんに対する失礼な態度は相当我慢してきたんだ、それなのに、よし分かった、

こんなに父さんが態度を変えないんなら、僕は澄さんと蛍と3人で一緒に家を出て行くよ、それでいいんだね。」

到頭光さんは事ここに置いて、親子別居の意思表示をしました。

 ここまで来ると父もついに怒りを露わにしました。

これだけ言って分からないのならと、お前がそうしたいのなら好きにするさと、この後は売り言葉に買い言葉です。

ああそうするよ、ああそうかいと、本堂の入り口で何だかんだと父息子の激しい口喧嘩です。

 この騒々しさに奥の座敷から澄さんのお兄さん、光さんの義兄になりますが、何事かとやって来ました。

それぞれの話を聞きながら、妹の舅には目立って味方しない方がよいと感じ、義弟の光さんの言う方にもっともだと頷きます。