早めにその継ぎ目から人を遠ざけないと、こちらの人が消えたりあちらの人がこちらへ現れたり、
今でさえ相当混乱しているのに、これ以上人の出入りがあれば大混乱になってしまうよと、話を聞いた男の人は酷く慌てるのでした。
「そうですね、取り合えず本堂が怪しい場所の第一候補でしょう。次はこの山門付近とか。」
急を告げに来た男の人は案外落ち着いていて、訳知り顔で慣れたように自分の意見を言うのでした。
「成る程、そうかもしれないな、あの子の話でも本堂が出て来たし、
この山門の辺りであの子が見えたり消えたりしているようだと私も感じていたんだ。」
蛍さんをあやしていた男の人は、思わず話を持って来た人の袖を引いて、山門から離れると蛍さんを遠目に見ながら、
「あの子は如何したものかね、こちらの世界の子なのか、どこか別の世界から来た子なのか、どう対処したものかね。」
そんな事を相手の人に相談するのでした。
「こう混乱していてはどう判断のしようもないですね。まずは分かっているだけ図にしてみてはどうでしょうか。」
相談を受けた男の人がそう言うので、それは名案と、2人で自分達が分かっている事柄だけを地面に図に描いてみます。
(蛍さんの父が2人、蛍さんが2人
、そして、本堂に光という男の子
)
「今のところそんな感じでしょうか。」
本堂から来た人が、もう1人の男の人の言う事も聞き合わせて、2人の見解を図にします。
「光という男の子?男の子もいるのかい?」
山門で蛍さんといた人はへーっと言うと、本堂に男の子と女の子ね。そう呟きました。
「さっき私は言いましたよ。」
と図を描いた人が答えます。呆けるにはまだお早いでしょうに。そう言っていやぁと参りましたねという具合で笑います。
彼は笑われながら、照れて苦笑いして、
「他の考え事をしていたのでうっかりしていたよ、確かにさっき君はそう言っていたね。思い出したよ。」
そう答えると、自分もわっはははははと笑い転げ、2人何だか急に楽しそうな雰囲気になりました。
それで、遠くにいた蛍さんは2人の男の人に段々近付いて来ました。
『おじさん達何か面白い話をしているんだわ。』と思ったのです。彼女が1人でいて退屈だったせいもありました。