Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ダリアの花、116

2017-04-03 17:34:44 | 日記

 「迷子ですか?」「そうだそうだよ。」

そんな男女の声がして、お寺の本堂に人が入ってきました。

「こんな朝の早い時間から迷子やなんて、この辺の子やないんどすか?」

そう言いながら、このお寺の若奥様が舅の住職さんとやって来ました。

「ああそうなんだ、困ったな。見た事無い子なんだよ、顔に覚えがないし、何処の子なんだろう。」

住職さんもそう言って、若奥様もそうどすねぇと、お母さんに聞いてみられたらどうですやろと、 2人困り顔で相談しています。

それから兎に角と、住職さんはこれから用があるからと忙しくぱたぱたと本堂から出て行かれました。

 入れ替わりに大奥様が本堂にやって来ました。

 「どうしたの 、迷子だって?」

大奥様は気乗りしなさそうに声をかけます。そして、ちょっとちょっとと若奥様を脇へ呼び、

「捨て子じゃないの、」と声を落とします。

その後ヒソヒソと若奥様に耳打ちしながら、この辺ではままある事だからと、あまり関わり合わない方がいいよと注意します。

 そうどすやろか?来ている服も質の良いもんやし、話す事もしっかりとしとります。きちんとした家の子や思います。

と若奥様は大奥様に自分の見解を述べてみるのでした。

 お前がそう言うならと、大奥様もじゃあ私が話してみるわと、あんたじゃあ話が通じないだろうしねと言うと、

蛍さんに近付いて話しかけてみます。何処から来たの。?お名前は?

問いかけられた蛍さんは、正直に自分の姓名と住所を言いました。

 おや、あそこの家にこんな大きな女のお子さんがおられたかしら。と、大奥様は不思議そうな顔をされました。

そこで私のお父さんのお名前は?と尋ねてみます。蛍さんが、私のお父さんの名前はねと答えた父の名を聞くと、

大奥様は、えっと酷く面食らうと共に、おやまあとほくそ笑んでしまいました。

 あの気真面目でやたら固い事ばかり言っている人が、案外陰ではこんな事を仕出かしているものなのだ、

誰かもそうじゃないかと噂していたけれど、本とにそうだったんだわと、ぷっと吹き出してしまいました。

「おばさん、唾が掛かった、」

と蛍さんは膨れっ面をしました。


ダリアの花、115

2017-04-03 14:34:08 | 日記

 朝の本堂で、蛍さんは酷くしょんぼりとして、困り果てた様子でいました。

畳の縁に腰を掛けて、うな垂れて1人ポツンと座っていました。

「困ったなぁ。」

そう呟いて、足元の木の廊下の年輪を見るともなしに眺めていました。

 すると、本堂の後ろの方から男の人が現れました。

入り口近くに女の子がいる事にこの男の人は気付きました。

それとなく女の子の様子を気にしていましたが、そのうな垂れた後ろ姿に、如何やら何だか困っている雰囲気だと察します。

『迷子かしら?』そう思って、声をかけようかどうしようかと思いながら、少しずつ女の子に近付いて行きました。

 蛍さんは何気なく振り返って、本堂の柱の陰に男の人がいることに気付きましたが、それで如何ということもなく、

知らない人だと思うと、自分の困りごとがその人に解決できなる訳ではないと思うのでした。

それでまた元の様に向き直ると、下の廊下に目を落とし、深々と溜息を吐くと困ったなぁと呟くのでした。

 彼女は何を困っていたのでしょうか。

柱の陰にい男性は、振り返った女の子の顔を見てびっくりしました。それは紛れも無い蛍さんの顔だったからです。

『あれは、』と驚き、ドンと胸に衝撃が走り蒼ざめました。

 ここであったが百年目、初め仇敵に会った気がして憎らしく、そして懐かしく嬉しいような、また残念なような、

様々に悲喜こもごもな感情が複雑に湧き上がってきました。

男性は如何しようかと迷いました。蛍さんに声をかけた物かどうか。

そうするとここでの今までの生活が全て無駄になってしまうかもしれない。

元の黙阿弥で、息子や可愛い孫との生活が全く無に帰してしまうかもしれない。そう思うと、

彼はそれ以上は彼女の方へ足が進まず、立ち竦んでしまいました。

 如何やら何故彼女が困っているのかもこの男性には想像がつくのでした。

彼女の窮地を大体察しながら、この男性は、『御免ね。』、今の生活がいいんだよと、

他人より己が幸せと思い、蛍さんがうな垂れて彼に無関心な内にと、そそくさと姿を消してしまうのでした。

 


親子で行きます。

2017-04-03 14:09:07 | 日記

 予定はないのですが、毎年お花見は楽しみなので、多分、母と行きます。

昨年も母と花見弁当を買って、ペットボトルを持って、気楽に花見に行きました。

母の方は足の調子が悪く、車で出かけたところ、花見の公園の駐車場は満車で入れませんでした。

徒歩15分程の所なので歩いた方がよかったのですが、当時の母は徒歩でその距離がきつい状態でした。

それで珍しく車で行ったのですが、「満車」の文字に文字通り目も当てられ無い状態に、

車でぐるぐると迂回する事になりました。

 迂回する内に桜の咲いている神社に行き当たり、見ると駐車場もあり、空いていたので駐車してお昼にしました。

この駐車場、目の前に古い大きな桜の木があり満開でした。

駐車場は個人宅の物みたいで気が引けましたが、文句も言われずに花見が出来ました。この間15分程でした。

 その間に、家の人が出て来てにこやかに眺められたりしました。お客と思われたのかもしれません。

多分内心は『人の家の駐車場でずうずうしい。』と思われていた事でしょう。

こちらも、私達に文句を言いたいのだろうなと思いましたが、多分神社のお家の人かなと、

後日でもお賽銭を上げて置こうと早めに切り上げて出発しました。

 その後は花見の別の駐車場へ回り、少し歩いて花見をして帰りました。

とても沢山の人で、歩道は人波がひっきりなしに行きかっていました。

桜のピンクや樹木の緑、様々な通行人の服装で、青い空の下に時に派手な色が点在して、

花見の時期は穏やかでそれなりの絵になる光景だなと感じました。

 あれから1年経ちますが、まだあの神社には行っていないので、

今年は早めにお参りしてお賽銭を上げて来ようと思います。私にまた行く勇気が出るとよいのですが。