Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ダリアの花、117

2017-04-04 18:59:38 | 日記

 お寺の大奥様と蛍さんの父が話をしている間、若奥様の方も、もう1度蛍さんに話しを聞いてみようと思います。

「ねえ、あなた、蛍さんだったわね、嘘は駄目よ。」

さっきまで優しかった若奥様の方も、何だか自分を嘘つき呼ばわりして、生真面目な目つきで自分の顔を眺めて来るのです。

蛍さんは嫌な気分になりました。

  蛍さんも若奥様に負けず劣らず、いたって真面目な方だったので、嘘を吐いたと言われる事はかなり情けない事だったのです。

ムッと来て思わず若奥様を睨んで仕舞いました。

その蛍さんの憤慨した顔付きに、この子は本当のことを言っているのだと若奥様は直感するのでした。

 それで念のため、あそこにいる人はあなたのお父さん?と目の前の子供に訊いてみます。

彼女の答えを聞き、その様子を見て、真偽を判断したいと思うのでした。

 「あの人はお父さんだけど」

さっき話したら、ホーちゃんのお父さんじゃないって言われたの。何だか知らない人みたいな冷た言い方で、

寄らないでくれって言って、知らんぷりして行ってしまったから、お父さんじゃないみたい。

だけどお父さんだと思う。でも、本当に知らない人みたいだった、顔だけ似てるのかと思ったけど、

お父さんにそっくりだし、でも違うのかなぁと、子供は困り果てています。

 ホーちゃんのお父さん何処に行ったんだろう、ここでちょっと待っててと言って居なくなったのに、

ずーっと帰って来ない。と、しんみりとして全く元気がありません。

 「お父さんとここへ来たの?」」

奥様は子供に聞いてみます。

蛍さんはそうだと言い、朝早くに目が覚めて気分がいいから、連休だし、いい所に行こうと言って連れて来られたのだと言います。

いいところねぇ、その言い方もあの姑と話す男の人が言いそうなことだと彼女は合点します。

寺をいい所だというというのも、あの人ならそうだと彼女には頷けるのでした。

 

 


ダリアの花、116

2017-04-04 14:09:52 | 日記

 その蛍さんの不服そうな膨れた顔を見て、大奥様はまぁと、本当にあちらさんのお子さんだわと合点されるのでした。

「お父さんの妹さんの子供の頃にソックリの膨れっ面よ。」

成る程あちらの家の血筋のお子さんだわ。この膨れっ面も血筋ねぇと、蛍さんの頬をキュッと抓るのでした。

「痛い!」

急に抓られた蛍さんは、思いも掛けない出来事と、大奥様の抓り方が案外にも痛かったので、思わず声を上げると、

今までの緊張が堰を切ったように溢れ出て、わーっと泣き出してしまうのでした。

 このお寺の男のお坊さんの方は親切だったのに、女のおばさんの方は乱暴だなんて…、

何時もは近所のおじさん達よりおばさん達の方が親切なので、男の住職さんでさえとても親切だからと、

お寺の女の人はより親切なのだろうと期待していた蛍さんだったのでした。

それで予想外の事に余計にショックを受けてしまったのでした。

泣き出した蛍さんはなかなか泣き止むという事が出来ませんでした。むせび泣いてしまいます。

 到頭泣く子には勝てないと、大奥様は弱り切ってしまい、子供の泣き声は嫌いだからここは任せましたよと、

蛍さんを若奥様に任せると奥の座敷へとそそくさと消えてしまいました。

 そこで若奥様は鉛筆やメモ帳など用意して、蛍さんの両親の名前や電話番号等、祖父母の名前から母の里の住所や名前等まで、

聞けそうな事、蛍さんの言えそうな事を聞き出すのでした。

あとは聞き出した事について裏付け調査というのでしょうか、メモを頼りに電話などで連絡して聞いてみます。

調べた結果を大奥様とも相談したり話し合ったり、不思議な事だと首を傾げながら、また2人で本堂まで戻ってきました。

 そこで、お寺の墓所から出てくる蛍さんの父に気が付きました。

「おや、噂をすればで、当の本人があんな所をうろついているじゃないですか。」

蛍さんの父を目ざとく見つけたのは大奥様でした。彼を指さして若奥様に知らせます。

「お前ちょっと言ってあの人にこの子の事を話して来てくれないかい。」

そう言われて若奥様は戸惑います。如何話せばよいでっしゃろと言うと、不安気な様子です。

私の話で通じるでしょうか。とやや狼狽えた雰囲気です。

 大奥様はほれそれと、一寸言い淀んでおられましたが、まあいいわと、

私が言ってきますからと、蛍さんの父が見えた所へと立って行かれました。