さて、機内では食事が出たようです。メニューは覚えていませんが、細長くて小さなパンが出ていたようです。私には初めての味わいのパンでした。フランスパン程に硬くはないのですが、柔らかくも無く、みっちりとした食感でした。これを私は美味しいとパンと評価しました。この時、私の隣の席には3人家族のお母様が座っておられたと思います。
「このパンどう思いますか?」
と彼女に聞かれて、
「美味しいですね、流石にパンの文化のお国柄、こんなに美味しいパンを食べたのは私は初めてです。」
と、私はにこやかに答えました。
「私は家でパンを焼くこともあって…。この味なんですけど…、一寸似た味のパンで思う事があって…。」
と、何だか口籠られて、お母様は黙ってしまわれました。当時、私には彼女の言いたい事がわかりませんでした。
「あまりこのパン食べない方が…。」
そんなことを続けて言われたのですが、この時はもう、私は既にきっちりとパンを完食した後でした。
丁度この翌年、私は手作りパンに挑戦していました。何回かパンを作り、ある時、この機内食のパンと同じ味と食感になるパンを作ったことがありました。その食後2日間くらいの様子と、この旅のこのパンを食べた翌日、翌々日の私の体調を思い合わせて、やはり思う所がありました。そして、この時のお母様の様子と言葉に合点したのでした。
思うに、この航空会社の飛行料金はかなり割安な物だったのだろうと予測されます。そして、私は別の場所でもこの同じパンを食べる事になり、美味しいパンと嬉しく完食したのでした。