さて、そう待ちくたびれる事もなく、何時ものように両親の真夜中の喧騒で目が覚めました。
何時もはうんざりして、早くまた寝てしまいたいと思うのですが、
今回は耳を澄まして両者の言い分を聞こうと私は布団から身を乗り出してみます。
何だ、かんだ
、と2人の言い争い(怒鳴り合い
)が聞こえてきます。
私は、仲が良いのかな?これはじゃれ合っているのかな?
ふざけたり
、揶揄い合って楽しんでいるのかな?
そんな事を考えながら話の内容や、声の調子、物音等等しばらく念入りに聞いていました。
そして、これは、やっぱり普通に喧嘩だなと結論すると、溜息
、やおら布団に潜り込んで、
早くまた寝てしまいたいと目を閉じて思うのでした。
夜中煩くて目が覚めると、目が冴えてしまってなかなか2度寝が出来ません。
睡眠不足とまでは言いませんが、そんな点でも甚だ迷惑に感じていました。
精神的にも、肉体的にも、子供に負担を掛けていると親は気付いていたんでしょうか。
私だっていい加減、腹が立つのが分かってもらえるかと思います。
それで、翌日妹に両親の喧嘩は仲が悪いからだ
、と私はハッキリ言ったものです。
昨晩、お姉ちゃんは注意して聞いていたけど、仲が悪くて喧嘩しているとしか思えなかったと。
妹の方は昨夜の喧嘩を聞いていたのかどうか、そう、と答えて特に反論はしてきませんでした。
そんな妹とのやり取りがあって、学校で友人にもそんな話をして、
妹の言い分は言い分として、私は確認してみたけれど、やはり自分の見解に変化は無かったと告げるのでした。
友人は、妹さんに言ったの、小1なのに可愛そうに、と言うので、
そうかなぁと、私。
事実そうなんだし、じゃあ、私の意見が間違っていたと妹に言った方がよかったの?
と、聞くと、友人もそれはどうとも言えないけれど、と、言葉を濁してしまうのでした。
結局、Junさんの家庭の事だから、とこの話はそれ以上掘り下げた話題にはならないのでした。
それから4、5日して、私がただいまと家に入ると、座敷から祖父の声がしました。
待っていたというような感じで、こっちまで来てくれと言います。
私は祖父が自分を呼ぶなんて珍しい事と思いながら座敷に入って行きました。
「お前、妹が可愛そうだと思わないのか。」
祖父はいつになく怖い顔をして私を睨むと、一言だけ、そんな事を言いました。
祖父に冷たくあしらわれるのは、5年生の時の交通事故以来です。
あの時も怖い顔をしていましたが、今回は2度目でした。
滅多に見ない祖父の怒りの形相に、やはり私は悪かったらしいと反省してしまうのでした。
多分、両親の喧嘩の事を、2人の仲が悪いせいだ
と妹に言った事が悪かったのだな、
と大体察しが付きました。
その事について察しはついたのですが、私はこの時祖父に謝ったかどうか覚えがありません。
ごめんねと言ったかもしれませんし、しょんぼりして気を付けるねと言うと、そのまま部屋を出てきたかもしれません。
そして、妹の事は妹の事として、私の立場は誰も考えてくれないのだなと寂しく思ったものでした。
それでも、私の小学生の頃には祖母がいて、私は祖父母2人の仲睦まじい姿を見る事が出来たこと。
その為その記憶が良い思い出として私の中にはあるので、結婚に対しても憧れ
を持つことが出来る。
しかし、両親の不仲だけを見る事になる妹は、
結婚に対して失望感だけしか持たない事になるんだ
と察しが付くのでした。
そうか、だから両親は本当は仲が良い
という事にしてあるのだなと、祖父の真意を私なりに汲み取るのでした。
それにつけても、上って損だなと私はげんなりするのでした。
年を食っているだけに真実が分かってしまうと。