昔々、あるところに道を行く若者がいました。若者は来る日も来る日も道を探して歩き続けていました。
ある日のこと、若者は歩いている道の途中でふと立ち止まり思いました。
「この道はいつか誰かが来た道では?」
歩き始めた朝には感じられなかった思いが、若者の足を重くしてしまいます。もっと別の道がなかったのか。初めの一歩を間違えたのではないか。様々な疑念が渦巻くともう真っ直ぐな目で道を見つめることもできませんでした。明日は新しい道を行こう。若者は自分に言い聞かせます。
ある日のこと、若者は歩いてきた道の途中でまた立ち止まり思うのでした。
「この道はいつか誰かが来た道じゃない?」
またいつかの思いが道の前に立ち上がりました。それは若者に前進することの意義をたずね苦しめます。本当の自分の道はどこかにあるのだろうか。(ないとは死んでも思いたくない)若者の歩く道にはいつでも困難な問題が待ち受けているようでした。
ある日もある日もある日も夜が明けると道には若者の歩く姿があったものです。順調な道はなく、目的地など一切見つかりませんでした。時に新しく思えた道も紆余曲折を経る内にだんだんと怪しくなっていくのでした。やっぱりそうだ。ためらい、狼狽え、取り乱しては足踏みをして、迷っては引き返す。ただ道を行くというだけで、おかしなほど時間ばかりがすぎていくのでした。
「我が道はどこにあるのか?」
謎めいた若者の道に月の明かりが真っ直ぐ伸びていました。