眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

Together (やまとなでしこ)

2013-03-07 19:46:08 | アクロスティック・メルヘン
「約束してね」
間を空けず、開けたらすぐに閉めること。
扉から、何もかもが逃げてしまうから。
何度も何度も、お母さんはそう言って、
手振り身振りを交えながら、
しつこくしつこく、これでもかこれでもか、
これでもかーっ、というほどに迫ったのでした。

約束したのは昨日のことのように、
まだ胸の中に強く温かく残っていて、
時々その声がどこからともなく蘇っては、
何度も何度も、何度も語りかけるので、
てっきりお母さんがそこにいるように思えて、
「心配しすぎ!」と風に向かって、
答えたりする日もあるのでした。

約束を忘れたり破ったりするようなことが、
まさかあるとは夢にも思わずに、
扉を開いた瞬間、
鳴り響いたものがありました。
「電話だ」
静かだった部屋の中に、
Call 音が繰り返し鳴り響いたのでした。

厄介なのは同時に2つのことを考えられないこと。
まだ開けたまま出てしまう。
「……と申します。……」
名前を名乗ったのは男のようでした。
出た以上話さなければ。「お母さんは今はいません」
しばらく押し問答をしてから、
こつんと電話を切ったのでした。

ややー!
まだ開けたままだった!
扉のことにようやく気がつきました。
なんてことでしょう!
てっきり閉めたと思ったよ。
失敗しちゃったよ。
こんちくしょー!

やがて事態の深刻さに気がついて、
真っ青になったのは、
扉を抜けて、みんなみんな、
何もかもがこのチャンスを見事につかみ、
天が与えた良い機会というように逃げてしまったことを、
知ったからでした。
後悔の念が押し寄せてきます。

やれやれと思っていると、
まだそこに誰かいる気配が、
扉の中に誰かがいることがわかりました。
「なぜ君は逃げないの?」
「て言うか、君は誰なの?」
少女はびっくりして立ち尽くしました。
こいつ、生意気だ!

やさぐれながら少女は黙っていました。
「まあ、いつもは2行か3行くらいしか読めないから」
トマトは、本を開いたまま言いました。
「なるほど、そういうことか。私にも読んで聞かせてよ」
「て言うか、約束はどうなったの?」
少女はその時もう一度約束のことを思い出したけれど、  
腰を折って中に入りました。                   「一緒に読もうよ!」

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モーニング

2013-03-07 18:49:41 | ショートピース
朝はいつも置いてきぼりばかりを食っている。もっと早くすればいいのにと誰かに言われても、彼女は決して自分のペースを変えようとはしなかった。「きっと寂しいのが好きなんでしょう」誰かが呆れたように言う。ひとりでに時は過ぎて、足早に夜がやってきても、彼女は食べ続けている。#twnovel

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