眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

疑惑の人

2020-11-26 06:16:00 | ナノノベル
「者共、疑ってかかれー!」
 うわーっ、僕がいったい何をしたんだ?
「お前元気か?」
「お前起きてるか?」
「お前さそり座か?」
「どこから来たかー」
 一気になんなんだ?

チャカチャンチャンチャン♪

「もっともっとかかれー!」
 何だ? 何が目的なんだ
「お前家から来たか?」
「お前仕事するか?」
「お前兄ちゃんおるか?」
「お前人間嫌いか?」
「夢あるか?」
 何と返せばいいのやら……

チャカチャンチャンチャン♪

「もっと深く疑ってかかれ!」
 もう解放してくれ
「お前バナナ好きか?」
「バナナは野菜か?」
「バナナはおやつか?」
「おやつは500円か?」
「お前おやつ好きか?」
 もうどっか行ってくれよ

チャカチャンチャンチャン♪

「もっと広く疑ってかかれ!」
 ならば他でも当たってくれよ
「お前虫嫌いか?」
「お前左利きか?」
「お前暑がりか?」
「人生は夢か?」
「メロン好きか?」
「宇宙広いんか?」
 もう僕じゃなくていいよ

チャカチャンチャンチャン♪

「ボス、こいつ何も答えませんぜ」
「ふっふっふっふっ、まいってるのさ」
「へへっ、そのようです」
「よし、もっともっとかかれー!」

チャカチャンチャンチャン♪

「お前ビーフカレーか?」
「チキンカレーか?」
「ポークカレーか?」
「チキン煮込みカレーか?」
「スープカレーか?」
「お前ポトフか?」
「クレアおばさんのか?」
「シチューの方か?」
「お前楽しいんか?」
「寒いんか?」
「まいっとんのか?」
「宇宙人は……」

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スロー・インプット(ゆとり時代)

2020-11-26 00:11:00 | ナノノベル
 捜査官は容疑者をゆったりと泳がせていた。何も急く必要はない。1パーセントの見込み捜査も持ち込まない。そいつが現代的なコンプライアンス。誤認逮捕はかなわない。あくまでも慎重に、捜査はゆったりと行うものだ。容疑がはっきりと固まるまでは見失わない範囲で泳がせる。200年、300年、たっぷりと時間をかけて。積み上げられた捜査資料の中身は殴り書きのままになっている。整えるには早すぎる。(そういう時代だ)

 容疑者は逃げきれない時間の中を泳ぎ続けるしかない。ひと時は詩情の湖を泳ぎ、ひと時は芸能の田圃を泳ぎ、季節が巡れば湘南の海を泳いだ。一通り泳ぎ疲れると職人の世界にも飛び込んだ。多くの魚に触れて感化されたようだった。
 寿司職人の修行もまた急がない世界だった。80年、90年とも言われる修行のはじまりは板場にはない。まずはお絵描き帳を広げて魚の絵を描くことから。情熱はゆっくりと温めなければならない。(そういう時代だ)

「たこですかね」
 捜査員は密かにお絵描き帳の上を注視している。
 人生は長い。
(ゆっくりいこうよ)

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