「……」
「はあ?」
秋はレジスター・ボックスを出て表まで飛び出して行った。
「あんた今私に何言った?」
「ああ、ごめん。わるかったね」
「謝らなくていい。けどもう顔見せんな!」
「えっ? 謝ってるじゃない。俺謝ってるのに」
「ええからもう2度とうちに来んなよ!」
「何だよ……」
店長が声を聞いて店から飛び出してきた。
「君。もういいからかえって」
「店長……」
「いいから早くかえってきて」
「あの人私に」
「あの人は出禁だ。それでいいな」
「いいんですか」
「もういいから」
「店長……」
「天ぷらが揚がってるから、早く出してあげて」
「はい!」
なせばなるなさねばならぬ波風に
ナッツを投げてナンバーガール
(折句「ななななな」)
こんなもの何になるのと言われても
もう鳴っている詩のファンファーレ
あれ何か十月みたい風鈴が
ラップに乗っていい風になる
(折句「アジフライ」)
不条理なツキノワグマに飛ばされて
冥王星は山賊になる
(折句「フットメザ」)
どうにでもなろう独りの物書きが
好きに紡いだローファンタジー
成駒がいっぱいできた両雄の
将棋は今日も明日になるね
何もないとこから君がなるという
夢は絵空事でもオーケー!
人が休んでいる時に働いている
俺たち毎日バイト・ライフ
改行したら1行あいて
戻って始めるだけ
水増しされるワーク
俺の時間
いつだって土砂降りの搾取
昨日は何を食べたかな
返却口から突き返される
夢
「まだ愛が残ってるでしょ」
高速で過ぎていく急行
中に人が乗っているらしい
1日1日 継ぎ足していくライフ
カロリーなんかで決めないでくれ
俺たちは手に取れる器が欲しいのさ
椅子を2つくっつけてベッドになるのかい
毛布がなければもう眠れなくなった
11月の夜
人が笑っている時に落ちている
俺たち毎日最果てモード
向こう岸の列車から人があふれ
階段へ向かう
皆上がっては下りるばかり
ボタン&ジッパーのブルゾン
もう留め方も忘れてしまった
交差点の真ん中に
不自然に浮いた形
あれは黒いパンツ
よかった何も死んでいない
高速で抜けていく11月
歴史が動いているらしい
1日1日 ごまかしていくライフ
グラムなんかで求めないでくれ
俺たちは手に触れる形が欲しいのさ
1月も8月も休みなく
補うことがお前たちの仕事だと
いつからそんな風になったのだろう
どこまで行ってもどこでもない
どこまで行っても誰でもない
人がはしゃいでいる時に紡いでいる
俺たちの毎日noteライフ
まだここに残されている創造の庭
寝静まったタイムラインに
あいつはまだ生きているだろうか
ゴミを拾い自転車を道端に寄せた。地味な作業が一段落を迎えた頃、落ち葉に触れると浮遊の感覚が戻ってきた。
古民家の壁をよじ登って軽く浮遊実験に入った。人気ないところから始める手もあったが、気が逸っていた。偉大な実験がこそ泥騒ぎに変わるかも知れない、危ないところでもあった。路地裏に着地した時、一服する料理人と顔が合った。「おつかれさま」と男は頭を下げた。同業者だと思われたのかもしれない。
浮遊コントロールに自信を得て一気に高度を上げた。高いビルをクリアする途中、浮遊して行く以外に垂直に壁を駆け上がる動作を取り入れてみた。これは映え増しだ。
最上階に近いところまで浮遊した時、室内で窓掃除をしている男と目が合った。男は驚いて雑巾を落とした。それから見えなくなって、戻ってきた時には手に缶コーラがあった。
「おつかれでしょう」
開いた窓から差し出してくれた。
体を傾けながらコーラを流し込んだ。この動作は映えるぞ。
「おー!」
地上からの歓声だろうか。
専門家の提案によって精密なスキャンを受けると、浮遊細胞の活発な拡散が認められた。翌月には『ムー』への掲載も決まった。
「重力コントロールに成功した唯一の存在」
唯一の……
わるくない響き!