眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

心象パスタ・タウン

2020-11-20 02:54:00 | 夢追い
 一握りのパスタと侮って茹でると鍋の中で急激に成長した。絡めようとしたフォークを弾き飛ばして、パスタは腕に絡みつく。既にその時には他の勢力が部屋中のあらゆる物に絡み始めていた。食べられるのはこっちの方だ。家を追われて路上に出た。タクシー! 

「出してください」
「それは大変だね。もしも私がイタリアン・シェフだったらどうします?」
 運転手はおしゃれな髭を動かしながらジョークを飛ばした。
 交差点を直進した後で突然ハンドルから手を放した。
「何を?」
「驚かせたね。みんな飾りなんだよ」
 運転手はフライパンを握りオムレツを返していた。
「飾り?」
「ハンドルは不要なんだよ。道もないんだよ。目的地もない。そうさ。私はただのイメージ画像だよ」
「じゃあ僕もなのか?」
「安心しな。君はいるよ。君のために作られた世界だからね」

 家に帰ってもすべきことがみえないので駅前にいる。先の事が決まらないと歩を進めないモードに陥ってしまった。鎖で囲われた一角に入ると、踵の下で砂利が永遠的な癒しを与えてくれた。きっとここは立ち入り禁止区域だろう。左手にはまった鉄のパスタが意味するものは何だろう。僕は捕まっているのだろうか。

 パン屋の前はシャッターが下りている。警備員の前説に人が集まっていた。
「暗証番号を捨てなはれ。ふるー。はい。今まではただ風景を流れて行ったんでしょう。はい。1つは描けました。はい。心象風景ね。あなたが暗号化することやで」
 シャッターが震え、警備員がフェードアウトして行く。

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君のいたテーブル

2020-11-20 01:25:00 | オレソン
今夜は暑い11月
朝はTシャツ姿で歩く人を見た

突然テーブルにハエがやってきて
俺は咄嗟にコーヒーカップを持ち上げた

危ないところだった

I'll be back
君の羽がささやく

右手にコーヒー
左手でつなぐポエム

俺はハエの帰還を恐れた
ハエを集める奴は尊敬を集めない?
どうせつまらない噂さ

安心すると戻ってくる

ハエ交じりのポエム
誰が求めて手を叩くか

コーヒーがお好きですか
向こうにも人がいるのに

しつこく来襲しても
俺には武器がない
ポメラでハエは撃てないから

勝ち目のない戦い
互いの敵は
もっと他にいるはずだろう

右手にコーヒー
左手でつなぐポエム

少し大きくかくかくとして
小学生の友達が書いた
漢字みたい

忘れようとすると戻ってくる

ついに2匹目も参戦か
今度のは小さい
(コバエかな)

主役の座を奪われたテーブル
もう
小一時間経っただろうか

わかっているの
自分が何を
求めているか

ハエ交じりのポエム
誰が望んで手を叩くか

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セミファイナル(棋は対話なり)

2020-11-20 00:44:00 | 将棋の時間
「昼飯何食ったんだ?」
 そう言いながら銀をぶつけてくる。
「何でもいいだろう」
「カツ丼か? お前、俺に勝つ気か?」
「当たり前だ」
 少し気分を害しながら私は同銀と応じた。
「俺に勝たせろ。それが正しい結果だ!」
 と桂を跳ね出してきた。
「何を言うか」
 私は桂先に銀をかわした。

「お前じゃキングは倒せない。だから俺が勝つべきなんだ。俺はお前よりも先を見据えてるんだ」
「うっさいな。決勝なんか関係あるか」
 目の前の対局に集中すること。それもできない奴に負けるわけにはいかない。
「読みの深さが違うんだよ」
 失礼極まりないことを言いながら、自陣角を放った。
 うん? 何か意味わかんない。
 私は端歩を突いて様子をみることにした。

「はあ? お前の手、何か眠たくなるな」
「ああ、何か合わないな」
 もういい加減黙ってくれないかな。
「催眠術か?」
「催眠術じゃねえよ」
 駄目だ。反論するほど自分のペースが乱れてしまう。

「将棋を指してくれよ!」
 敵は反対側の桂も跳ね出してきた。
 第一感それは悪手だ。
 正しく指せば必ず私が勝つだろう。
 そうとも。彼の助言に従おうじゃないか……。
 私は雑音を封じて(将棋を指す)ことにのみ集中するのだ。
(舌戦の中で幸いにも棋士の本文に目覚めることができた)

「ドブネズミかよ」
「蠅が止まるぜ」
 読みの対岸でぼやく声が時々聞こえてくる。
 今の私にはもう関係のない話だ。
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