「もう丸2日になります」
客は1人で延長を重ねていた。
「来た時は、1時間のプランでした」
「ちょっと、私が見てくるよ」
「店長お願いします」
店長が到着した部屋には誰もいなかった。歌声だけが部屋に響いている。店長はすぐに社員を呼び寄せた。
「君、本当に電話を入れたのかね」
「はい、そうですが」
「見たまえこれを。この電話、線がつながっていない」
「あー、ケータイからかけたんです」
「何? いったいどこへだね?」
「実家の兄にです」
「お前に兄はいない!」
「試したな偽店長め!」
「逆切れ店員め!」
「ここは15年前になくなっている!」
「お前も知っていたか。俺は誰だ?」
「誰がお前だ! 逆二重スパイが!」
「私がスパイ……」
その時、一頭のヌーがたずねてきた。
「祭りからはぐれたんだね」
「おばあさま。いらしてたの」
「昨日からずっと歌っているのよ」