長年書きあぐねていた小説が、その気になって頑張ってみるとあっという間に完成した。
バンザーイ!
今までのあぐねは何だったんだ?
アイデア、ストーリー、キャラクター、オリジナリティー……。どれも今までで一番いいと言えた。
問題はただ1つ、小説のタイトルだけだった。
タイトルを疎かにすることはできない。
タイトルは小説の顔だ。あらゆる読者のイメージを最初に刺激し、思わず手が伸びてしまう。荷物で塞がった手も、ポケットに奥深く逃げ込んだ強情な手も、引き出してしまう。そんな強い顔が必要なのだ。
A案「 」
B案「 」
見つめれば見つめるほどにわからなくなる。
どちらもいい!
どちらも同じように好きで、同じほどこの小説に相応しい。
そんな2つの顔から私は目が放せなかった。
寿司もいい、焼き肉もいい。迷っている内にチャーハンになる。そのようなことはよくある。延々と迷っている時、突然後から現れたものは清々しくて魅力的だ。お姫様を持ち去ってハッピーエンドをつかむ英雄たちだって……。
「よーし。チャーハンだ!」
その時、私は完全に取り乱していたのだ。
A案B案を捨てチャーハンにするか。
そんなことを本気で考えていたなんてね。
一晩ぐっすり眠ると目が覚めた。私はそこまで馬鹿ではなかった。
馬鹿でも薄情でもないから、まだA案B案どちらも捨てられなかった。
仕方がない……。
私は同時に別々のタイトルで同じ本を出版した。
売れ行きは鴉が水をあびるような感じだ。
どちらも同じようなペースで売れている。
「上手くいけばどちらも買ってもらえるかも」
ふふふ……。
