眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

助演オーディション

2024-10-27 21:26:00 | 短い話、短い歌
「何か特技はありますか」
 求めに応じて歌い出す者、踊る者、楽器を弾く者、空手の形をみせる者、剣玉をする者、物まねをしてみせる者。みんな周到に準備してきたようだ。今回のオーディションにかける意気込みが感じられる。

「何か特技をみせてもらえますか」
 いよいよ僕の番がやってきた。
「何もありません!」
 わからないことはわからない。できないことはできない。無理せず、背伸びせず。それが我が道というもの。

「高いところから飛び降りたりできます?」
「できません」
 猫ならみんなができると思うなよ。
「おでんとか上手に食べれます?」
 はあ? 誰に言ってんだい!
「できませーん」
 それから似たようなリクエストが続き、正直僕は答えるのもうんざりだった。何か違うね。全然違うね。

「できませーん」
 できません、できません、できませーん!

「ああ、そうですか……」
 長い机の向こうから冷たい目を向けていた。
 監督はまだ僕の力をわかっていないな。
(僕の本当の力はまだここではみせられないんだよ)
「じゃあ、次の人」




「ほんのワンシーンに出してくださいな」飛び込む猫の気まぐれ志願







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