昔々、あるところにおじいさんがいました。おじいさんはやたらと山に芝刈りに行きました。暇さえあれば芝刈りに行くのでぐんぐんと芝刈りが上達して、気がつくと芝刈り達人になっていました。
「また来たか」
ある日のこと、犬はおじいさんを見つけて駆け寄りました。
「どうか弟子にしてください!」
「よかろう!」
そうしておじいさんの教育が始まりました。
「馬鹿もんが! 芝はこっちじゃ!」
「わん!」
「それじゃ100年かかるわい」
おじいさんは慣れない教育に手こずりながらも、どこかうれしげでした。
「わん!」
「よし、その調子!」
そうしてよい子だった褒美にタコボールを与えました。
ある日のこと、今度は猿がおじいさんに寄ってきました。
「どうか弟子にしてください!」
「よかろう!」
おじいさんはまた快く迎え入れました。
「馬鹿もん! 芝はこっちじゃ!」
「ひー」
「わしに恨みでもあるのか!」
素人に教育するのも楽ではありません。
「ひー」
「よし、その調子!」
よい子だった褒美にタコボールを与えました。
ある日のこと、キジと人間の子が寄ってきました。
「どうか弟子にしてください!」
「よかろう!」
おじいさんは、すっかり教育者の顔になっていました。
「馬鹿もん! 芝はこっちじゃ!」
「はい!」
おじいさんの厳しく情熱的な指導が続きました。
「わしを殺す気か!」
「しゅー、しゅー」
「こうやって刈るんじゃ!」
「早くご褒美をください!」
「しゅー、しゅー」
報酬がなければ頑張れるものも頑張れないという様子です。
「よし、その調子!」
おじいさんは勉強熱心な弟子たちを称えました。そして、よい子だった褒美にタコボールを与えました。
「この山の未来は明るそうじゃ」
おじいさんは手応えを感じて微笑みました。そうしてどんぶらこどんぶらこと小舟に乗って家に帰って行きました。
めでたしめでたし。