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風に煽られて凧はコントロールを失った。絡まった糸をたどって木に登って行くと、猫は凧よりも高い所に取り残されて固まっていた。複雑な状況が私を困らせる。
「おいで!」
猫は私の手から離れもっと上に行こうとしていたけれど、やがて観念したように私の胸に落ちた。
「モカ!」
モカは狭い所、高い所が大好きだった。テレビの隙間、家具の隙間、鍋の中、長靴の中、どこでも入れる場所を見つけては潜り込んだ。そして突然顔を出しては私を驚かせた。本棚に空いたスペースがあればすぐに飛び込んだ。どんどん上まで行くと帰り道を見失って固まった。
勝手に行って勝手に困る。
出会った頃から何も成長しない、本当に困った猫だった。
「コラッ! 今日という今日はきつく怒りますよ!」
モカは驚いたように目を丸くした。それからしばらく下を向いたまま反省していた。まあ、どうせ今だけだろうけど。
「モカー。もう今度はどこ行ったん?」
どこどこ?
全く懲りない奴だこと。
「モカー! モカよーい!」
どこまで困らせれば気が済むのか。
「モカー! モカさーん!」
いつもなら5分で見つかるのに。今日という日は、いつになっても尻尾を現さなかった。
「モカ」
(困るじゃないか)
「ちゃんと困らせてくれないと」
まさか、私を置いて行ってしまったの……。
考えられる場所はすべて見尽くした。
私は途方に暮れて床に目を落としていた。
タッタッタッタッタッタッタッ♪
その時、どこからともなく耳慣れた足音が聞こえた。
ここからだ!
私は夢中でスマホの保護フィルムをめくった。
モカは何事もなかったように私の胸に飛び込んできた。
「おかえり!」
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