信頼を寄せていた仲間に裏切られた。仲間は友ではなかった。打ちひしがれた夜道で男と目が合った。
「人を見る目がないなら、その目を霊たちに向けてほしい」
コーヒー1杯の誘惑に負けて私は喫茶店の中にいた。
「私にそんな特別な目は……」
「見届け人が不足しているのです」
私の話を遮って男は両手を合わせた。
「見届け人?」
「ほとんどの人は見て見ぬ振りです」
「見えてないからでしょう」
「勿論それもあります。でも見えてない振りをする人もいる」
私は目を逸らしコーヒーを口にした。
「映像として見てあげてほしい。ちゃんと存在を認めてあげてほしいのです」
「だから、私にそんな力は……」
「もう出し惜しみするのはやめましょうよ」
「別にそんなつもりは」
「力がない? それはまだ始まってないだけなんだ」
「いったい何が」
「隠さなくていい。7歳の時の記憶をずっと守っているのでしょう」
「あなたはいったい誰です?」
男は伝票を持ちながら立ち上がった。
「今晩、現れますから」(あなただけが頼りなんだ)
霊的な夜が始まろうとしていた。
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