眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

霊感コーヒー(見届け人の誘い)

2020-03-25 03:22:00 | ナノノベル
 信頼を寄せていた仲間に裏切られた。仲間は友ではなかった。打ちひしがれた夜道で男と目が合った。
「人を見る目がないなら、その目を霊たちに向けてほしい」
 コーヒー1杯の誘惑に負けて私は喫茶店の中にいた。

「私にそんな特別な目は……」
「見届け人が不足しているのです」
 私の話を遮って男は両手を合わせた。

「見届け人?」
「ほとんどの人は見て見ぬ振りです」
「見えてないからでしょう」
「勿論それもあります。でも見えてない振りをする人もいる」
 私は目を逸らしコーヒーを口にした。

「映像として見てあげてほしい。ちゃんと存在を認めてあげてほしいのです」
「だから、私にそんな力は……」
「もう出し惜しみするのはやめましょうよ」
「別にそんなつもりは」

「力がない? それはまだ始まってないだけなんだ」
「いったい何が」
「隠さなくていい。7歳の時の記憶をずっと守っているのでしょう」
「あなたはいったい誰です?」
 男は伝票を持ちながら立ち上がった。

「今晩、現れますから」(あなただけが頼りなんだ)
 霊的な夜が始まろうとしていた。


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