眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

オンリーワン(亡命志願)

2022-01-11 05:51:00 | ナノノベル
「そこ掘れわんわん!」
 不満を抱え込んだおじいさんのために、僕は宝の在処を指し示してあげた。おじいさんはわかったようにそこを掘りはじめて、当然のように出てくるものといえば、ガラクタばかりだった。

「このうそつきめ!」
 鬼のような形相で僕を追いかけるおじいさん。またすぐそうして誰かのせいにする。だから幸せは逃げていくんじゃないの。

(そこ)だと言ったのに……。

 僕の指す「そこ」は、ぐるっと回って隣の町だろうに、おじいさんの解釈は単純すぎる。だから、僕を悪者にすることしかできないのだ。

「この馬鹿犬め!」

「さよなら、おじいさん」

 捨てられる前に捨ててやるよ。
 伝える相手を間違えたら真実もガラクタになるし、僕だって幸福になれない。

「僕はもう隣の国へ行くよ」


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