眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

爆走おじいさん

2025-01-10 00:23:00 | ちゃぶ台をひっくり返す
 横断歩道の前に立ち止まったおじいさんを無視するように、車はスピードを落とすことなく走りすぎた。

「透明人間かい」

 おじいさんは、自身の存在に哀れみを重ねみた。その時、おじいさんの体は無意識の内に走り出していた。エンジンは燃えるような怒りだ。目にもとまらぬ速さで車道を突き進むと交差点を4つ越えた先で、ついにその標的を捕らえた。車体にとりついたおじいさんの姿を見ると、ドライバーは驚いて窓を開けた。おじいさんは、すかさず先の横断歩道の件について問い詰めた。

「渡る意思を確認できなかった」

 男は苦しげに答えた。元から確認する意思などなかったからだ。
 おじいさんは、免許証を取り上げると男の車をひっくり返した。おじいさんにとっては、それが今日のちゃぶ台だった。

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