僕は現代小説家。数年前から、ほとんど書くことはなくなった。僕はまず自分の頭の中で書きたいもののイメージを膨らませる。ここにほとんどの精力を傾ける。そして、AIライターに伝える。あとは少し待てば作品ができあがる。僕はそれをざっと見て気になるところに付箋を貼る。それから、イメージのズレを伝え書き直してもらう。その工程は何度か繰り返され、だんだんと自分のイメージに近づいていく。AIライターとの粘り強いコミュニケーションが何よりも大切だ。長時間に渡る執筆作業は昔の話。
書くこと以上に「話す」能力を磨かねばならない。そういう時代だ。
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「……とまあ、だいたいこういう話なんだよ」
「おおよそ理解しました」
「よろしく頼むよ」
「名前はどうしましょう?」
「適当に頼むよ。無国籍な感じでね」
「わかりました」
「真ん中10000字くらい遊ばせちゃってよ」
「わかりました。文体はどうしましょう?」
「任せるよ。ポップな感じで頼む」
「わかりました。オチはどうしましょう?」
「それも任せるよ。ふわーっとした感じね」
「ふわーっとですね」
「そう。得意でしょ」
「ベストを尽くします」
「だいたいこういう話だから。細かい筋書きとか、みんな任せるから。いいようにやってよ」
「ベストを尽くします」
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そうして書き出しだけは自分で書くようにしている。そこは自分なりのこだわりと言えるかもしれない。(まあ、少なくとも今の内は)
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扇子を透かして見た恐竜たちは無言のまま向き合っていた。
「じゃあ、ここからよろしく」
「はい。それではお待ちください」
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