過去に私は何度かこのブログでマイク・ブルームバーグ氏のことを紹介してきた。
彼は元証券トレーダーだったが、金融情報企業(↓がそのロゴ)を創業して大富豪となり、のちにニューヨーク市長にもなった人だ。
現在米国で行われている次の大統領候補選びで民主党の候補のひとりだった彼は、3月4日にその選挙戦からの撤退を表明した。
民主党の候補として立候補した人たちではトランプに勝てないと、彼は遅まきながら立候補を表明し途中かなり善戦したが、スーパーチューズデー(3月3日)の結果を見て撤退をあっさり決めた。

米国時間の翌4日夕方(日本では5日の午前1:21)には、彼の撤退を告げるメールを私は受け取った。
別に私だけに来たわけじゃないよ(笑)。

登録した多くのサポーター全員に、ブルームバーグ氏の事務所から、時々刻々とこうしたメールが配信されていたのだが、このメールをもってブルームバーグ氏の選挙活動も終了した。
同時にブルームバーグ氏はジョー・バイデン氏の支持を発表した(↓)。

ブルームバーグ氏としては、それしか選択肢がないよね。それ以外の民主党候補というとサンダース氏しかなくなっているし、ブルームバーグ氏からすると、サンダース氏は候補者としてはあまりに不適格。オバマケアまではわかるが、公的保険で広く国民をカバーしようという「国民皆保険」を主張するサンダース氏みたいな人は、アメリカでは稀有だ。
話はそれちゃうが、日本では一応全国民がなんらかの健康保険に入ることになっている。多数を占める会社員や公務員だとそれぞれの健康保険組合にお世話になることが多く、それらは保険料も安いし給与天引きだし、会社員や公務員たちは普段その保険料の支払いをあまり意識することがない。ところが彼ら彼女らが60~65歳で退職するとしよう。当然ながらそれまで働いてたくらいだから、多くはピンピンしている。もしなんらかの理由で、任意継続により以前の健康保険を使うことができなかったとしよう。すると彼ら彼女らの多くは市区町村の役所に行き、国民健康保険に加入することになる。その保険料額は前年の所得をもとに決められる。年功序列賃金の日本では、例えば大手メーカーや役所に勤めていたシニアな退職者なら、国民健康保険の保険料は簡単にそれが定める上限金額に達してしまう。市町村にもよるが、その金額とは年間96万円くらいだ。それが年間10回に分割されて請求されることになる。毎月のように保険料を96,000円納付する(あるいは銀行自動引落としの手続きをとる)必要が出てくる。すごい金額だね。退職者がこれだけの金額を毎月のように支払うのは大変だ。これくらいの年齢だとピンピンしている人は多く、たまに風邪をひいたり虫歯になったりもするだろうが、その治療に仮に健康保険を使わず100%自分で払っても、年間96万円なんて金額には遠く届かない。だったら国民健康保険なんて加入したくないと思う人も多いはずだ。
ところがそれだけ多額の保険料を受け取っている国民健康保険の会計は常に苦しい。いったいその保険料はどこでどういう使われ方をしているのか? どこか制度的に欠陥があるのではないか? この国民健康保険で広く国民をカバーしようとするのは、そもそも無理があるんじゃないのか? なんてことを思う人もいるだろう。
翻って米国大統領選の話。そうしたことを併せて考えると、サンダース氏が主張するような公的保険を広く使った国民皆保険ってアイデアは、一見皆に公平なようで実は不公平だとし、現行の制度(各自が選ぶ民間保険を中心にした制度)の方が良いと考える人が多いというのも、なんとも米国らしいなぁと私は感じるのでした。
ということで、サンダース氏を押しのけバイデン氏が民主党候補のトップに躍り出た。これまでブルームバーグ氏を支持した人も多くがそこへ流れ込んで、バイデン氏が現時点で米国民主党の最強の大統領候補である。

しかしねぇ、この人でトランプに勝てるかねぇ? バイデン氏は自身のセクハラ問題や息子のウクライナ問題も抱えている。トランプはどんな問題も跳ね返すヘンな図々しさがあるが、バイデン氏はそんなタイプではない。また副大統領としてもいまいち地味だった。まあ副大統領ってそんなもんだが。
次の話題。
3月1日に私はこう書いた。
私のグローバルマクロ戦略ヘッジファンドは、激動の2月にどういう成績を残したのだろうか?おそらく債券では大儲けしているはずだ。問題は株式。経験則的にはこういう上げ方とその後の急な下げ方への転換は苦手なはず。それらを合わせて全体としてはどんな結果になっているのか? なんだか暗い世の中。一斉に下げる時は下げて、経済も大やられで家計も大やられなんてことは避けるために投資しているヘッジファンド。うまく回っているといいが。
その後数値が出て来た。実際2月のファンドのリターンはどうだったかというと、全体では+0.4%だった。
そう言うと退屈に聞こえるでしょう。でも内訳を見ると、以下の通りかなりダイナミックなものだ。
● 債券では22%ほどプラス
● 株式では21%ほどマイナス
● コモディティ(第一次産品で木材や石油や貴金属や農産物など)ではほぼゼロ
● 外国為替もほぼゼロ。
・・・で、ファンド全体では、2月のリターンが+0.4%となったのでした。
3月に入って、市場はCOVID-19により一層翻弄され続けた。株式市場なんて毎日大きな値幅で変動している。それも行ったり来たりを繰り返している。
ご覧のグラフは米国株式市場の代表的指標、S&P 500である。同社のホームページからデータをダウンロードしてExcelでグラフ化した。

【出所: S&P社】
株式市場はいつもおめでたい。COVID-19がじわじわと蔓延しているのにもかかわらず、2月19日まで右上がりで史上最高値を更新し続けた。しかしその後急落。すごいスピードで2月末まで落ち続けたのだ。
しかし3月に入って連日上下にかなりの幅で変動した。ローラーコースター相場である。
一方、米国債券市場はちょっと違う動きを示した。こちらは先日も申し上げた通りインテリ的で、いつも早くから憂鬱な態度を示す。株式市場より2週間早く2月5日にはピークを打った。下のグラフは米国の10年満期の国債の利回り(左軸の単位はパーセント)だ。データは米国中央銀行とロイター社によるもので、グラフは私がExcelで作った。

【出所: FRB、最終の3月6日はロイター】
さらに株式と債券の2市場は、3月に入ってからも異なる動きを見せた。株式指数は毎日またもおめでたく上げて下げてを繰り返したのに対し、10年国債の利回り(↑)は3月に下げに下げ、3月6日には日中瞬間的に0.69%をつけている。もちろん史上最低値だ。3月に入って米国中央銀行はいきなり政策金利を引き下げた。そしてそれを受けて、債券市場はさらなる利下げを織り込んだ。利回りはどんどん下がったのだ。
一方低格付けの米国企業の債券は利回りを上昇させている。株式よりも国債が選好され、国債の価格が上がり利回りが下がるのは不景気な時にありがちな状況だ。しかし同じ債券市場の中で、信用度の高い国債が利回りを下げているのに信用度の低い社債が利回りを上昇させるという状況は、金利低下の傾向の中にもかかわらず金利を引き上げないと資金調達ができない信用度の低い企業が多く出始めたことを示し、それは市場が景気悪化のニオイを嗅ぎ付け、神経質になっていることを示す。
そうした市場の神経質な状態を表す指標として、シカゴ・オプション取引所(CBOE)が公表するVIX指数がある。恐怖指数とも呼ばれる。下のグラフがそれだ。データはCBOEが同社のホームページで提供している。それをダウンロードして私がExcelでグラフ化した。
オプション取引とは、将来何かを買うあるいは売る権利を売買する取引だ。例えば、今はいいけれど将来はどうなるかわからないから、自分が持っている株式を将来売る権利を今のうちに確保しておこうという人。あるいは同様に、今は資金がないからその株式を持っていないが将来それを買う予定があり、株価が安い今のうちにそれを買う権利を確保しておこうという人。そうした人が取引するのがオプション取引である。将来に不安な人が多いからこうした権利が売買されるわけで、その売買価格には、将来のその株式(債券等、株式以外のものもある)の価格変動性が大きくなることへの人々の不安の度合いが織り込まれている。逆に言うと、オプション取引価格からそれを売買する人々が想定しているであろう株式その他の将来の価格変動性の水準を割り出すこともできるのだ。

【出所: CBOE】
このグラフ(↑)がVIX指数である。米国株式S&P500指数のオプション売買価格から算出したもので、S&P500指数のオプション取引参加者が予想する今後30日間の同指数の変動性が示されている。これが大きくなるほど、人々が将来の株式市場が大きく変動すると予想し、不安を感じていることを示している。
これによれば、3月6日金曜日のVIX指数(オレンジ色の丸)は12年前の金融危機(グラフ左の一番高いところ)後に6回ある山の高さの水準に差し掛かったところと言える。人々は今後30日にかなりの大きさで市場に変動があると予想しているのだ。さて、3月の今後は実際どうなるのだろうね?
この指数は「恐怖指数」などと呼ばれるし、「VIX」という言葉の響きがなんだか怖いので、大変危なっかしいものと思われがちである。しかしVIXとはもともとは「Volatility Index」の略であり、単なる市場の「変動性の指数」を意味するに過ぎない。そして私の経験則としては、市場が現実に荒れている時にこの指数は将来のさらなる荒れを予想して見せるが、たいていの場合、その後は人々の興奮も冷めて市場は静かになることが多い。今回もそうであることが望ましいなぁ。
彼は元証券トレーダーだったが、金融情報企業(↓がそのロゴ)を創業して大富豪となり、のちにニューヨーク市長にもなった人だ。
現在米国で行われている次の大統領候補選びで民主党の候補のひとりだった彼は、3月4日にその選挙戦からの撤退を表明した。
民主党の候補として立候補した人たちではトランプに勝てないと、彼は遅まきながら立候補を表明し途中かなり善戦したが、スーパーチューズデー(3月3日)の結果を見て撤退をあっさり決めた。

米国時間の翌4日夕方(日本では5日の午前1:21)には、彼の撤退を告げるメールを私は受け取った。
別に私だけに来たわけじゃないよ(笑)。

登録した多くのサポーター全員に、ブルームバーグ氏の事務所から、時々刻々とこうしたメールが配信されていたのだが、このメールをもってブルームバーグ氏の選挙活動も終了した。
同時にブルームバーグ氏はジョー・バイデン氏の支持を発表した(↓)。

ブルームバーグ氏としては、それしか選択肢がないよね。それ以外の民主党候補というとサンダース氏しかなくなっているし、ブルームバーグ氏からすると、サンダース氏は候補者としてはあまりに不適格。オバマケアまではわかるが、公的保険で広く国民をカバーしようという「国民皆保険」を主張するサンダース氏みたいな人は、アメリカでは稀有だ。
話はそれちゃうが、日本では一応全国民がなんらかの健康保険に入ることになっている。多数を占める会社員や公務員だとそれぞれの健康保険組合にお世話になることが多く、それらは保険料も安いし給与天引きだし、会社員や公務員たちは普段その保険料の支払いをあまり意識することがない。ところが彼ら彼女らが60~65歳で退職するとしよう。当然ながらそれまで働いてたくらいだから、多くはピンピンしている。もしなんらかの理由で、任意継続により以前の健康保険を使うことができなかったとしよう。すると彼ら彼女らの多くは市区町村の役所に行き、国民健康保険に加入することになる。その保険料額は前年の所得をもとに決められる。年功序列賃金の日本では、例えば大手メーカーや役所に勤めていたシニアな退職者なら、国民健康保険の保険料は簡単にそれが定める上限金額に達してしまう。市町村にもよるが、その金額とは年間96万円くらいだ。それが年間10回に分割されて請求されることになる。毎月のように保険料を96,000円納付する(あるいは銀行自動引落としの手続きをとる)必要が出てくる。すごい金額だね。退職者がこれだけの金額を毎月のように支払うのは大変だ。これくらいの年齢だとピンピンしている人は多く、たまに風邪をひいたり虫歯になったりもするだろうが、その治療に仮に健康保険を使わず100%自分で払っても、年間96万円なんて金額には遠く届かない。だったら国民健康保険なんて加入したくないと思う人も多いはずだ。
ところがそれだけ多額の保険料を受け取っている国民健康保険の会計は常に苦しい。いったいその保険料はどこでどういう使われ方をしているのか? どこか制度的に欠陥があるのではないか? この国民健康保険で広く国民をカバーしようとするのは、そもそも無理があるんじゃないのか? なんてことを思う人もいるだろう。
翻って米国大統領選の話。そうしたことを併せて考えると、サンダース氏が主張するような公的保険を広く使った国民皆保険ってアイデアは、一見皆に公平なようで実は不公平だとし、現行の制度(各自が選ぶ民間保険を中心にした制度)の方が良いと考える人が多いというのも、なんとも米国らしいなぁと私は感じるのでした。
ということで、サンダース氏を押しのけバイデン氏が民主党候補のトップに躍り出た。これまでブルームバーグ氏を支持した人も多くがそこへ流れ込んで、バイデン氏が現時点で米国民主党の最強の大統領候補である。

しかしねぇ、この人でトランプに勝てるかねぇ? バイデン氏は自身のセクハラ問題や息子のウクライナ問題も抱えている。トランプはどんな問題も跳ね返すヘンな図々しさがあるが、バイデン氏はそんなタイプではない。また副大統領としてもいまいち地味だった。まあ副大統領ってそんなもんだが。
次の話題。
3月1日に私はこう書いた。
私のグローバルマクロ戦略ヘッジファンドは、激動の2月にどういう成績を残したのだろうか?おそらく債券では大儲けしているはずだ。問題は株式。経験則的にはこういう上げ方とその後の急な下げ方への転換は苦手なはず。それらを合わせて全体としてはどんな結果になっているのか? なんだか暗い世の中。一斉に下げる時は下げて、経済も大やられで家計も大やられなんてことは避けるために投資しているヘッジファンド。うまく回っているといいが。
その後数値が出て来た。実際2月のファンドのリターンはどうだったかというと、全体では+0.4%だった。
そう言うと退屈に聞こえるでしょう。でも内訳を見ると、以下の通りかなりダイナミックなものだ。
● 債券では22%ほどプラス
● 株式では21%ほどマイナス
● コモディティ(第一次産品で木材や石油や貴金属や農産物など)ではほぼゼロ
● 外国為替もほぼゼロ。
・・・で、ファンド全体では、2月のリターンが+0.4%となったのでした。
3月に入って、市場はCOVID-19により一層翻弄され続けた。株式市場なんて毎日大きな値幅で変動している。それも行ったり来たりを繰り返している。
ご覧のグラフは米国株式市場の代表的指標、S&P 500である。同社のホームページからデータをダウンロードしてExcelでグラフ化した。

【出所: S&P社】
株式市場はいつもおめでたい。COVID-19がじわじわと蔓延しているのにもかかわらず、2月19日まで右上がりで史上最高値を更新し続けた。しかしその後急落。すごいスピードで2月末まで落ち続けたのだ。
しかし3月に入って連日上下にかなりの幅で変動した。ローラーコースター相場である。
一方、米国債券市場はちょっと違う動きを示した。こちらは先日も申し上げた通りインテリ的で、いつも早くから憂鬱な態度を示す。株式市場より2週間早く2月5日にはピークを打った。下のグラフは米国の10年満期の国債の利回り(左軸の単位はパーセント)だ。データは米国中央銀行とロイター社によるもので、グラフは私がExcelで作った。

【出所: FRB、最終の3月6日はロイター】
さらに株式と債券の2市場は、3月に入ってからも異なる動きを見せた。株式指数は毎日またもおめでたく上げて下げてを繰り返したのに対し、10年国債の利回り(↑)は3月に下げに下げ、3月6日には日中瞬間的に0.69%をつけている。もちろん史上最低値だ。3月に入って米国中央銀行はいきなり政策金利を引き下げた。そしてそれを受けて、債券市場はさらなる利下げを織り込んだ。利回りはどんどん下がったのだ。
一方低格付けの米国企業の債券は利回りを上昇させている。株式よりも国債が選好され、国債の価格が上がり利回りが下がるのは不景気な時にありがちな状況だ。しかし同じ債券市場の中で、信用度の高い国債が利回りを下げているのに信用度の低い社債が利回りを上昇させるという状況は、金利低下の傾向の中にもかかわらず金利を引き上げないと資金調達ができない信用度の低い企業が多く出始めたことを示し、それは市場が景気悪化のニオイを嗅ぎ付け、神経質になっていることを示す。
そうした市場の神経質な状態を表す指標として、シカゴ・オプション取引所(CBOE)が公表するVIX指数がある。恐怖指数とも呼ばれる。下のグラフがそれだ。データはCBOEが同社のホームページで提供している。それをダウンロードして私がExcelでグラフ化した。
オプション取引とは、将来何かを買うあるいは売る権利を売買する取引だ。例えば、今はいいけれど将来はどうなるかわからないから、自分が持っている株式を将来売る権利を今のうちに確保しておこうという人。あるいは同様に、今は資金がないからその株式を持っていないが将来それを買う予定があり、株価が安い今のうちにそれを買う権利を確保しておこうという人。そうした人が取引するのがオプション取引である。将来に不安な人が多いからこうした権利が売買されるわけで、その売買価格には、将来のその株式(債券等、株式以外のものもある)の価格変動性が大きくなることへの人々の不安の度合いが織り込まれている。逆に言うと、オプション取引価格からそれを売買する人々が想定しているであろう株式その他の将来の価格変動性の水準を割り出すこともできるのだ。

【出所: CBOE】
このグラフ(↑)がVIX指数である。米国株式S&P500指数のオプション売買価格から算出したもので、S&P500指数のオプション取引参加者が予想する今後30日間の同指数の変動性が示されている。これが大きくなるほど、人々が将来の株式市場が大きく変動すると予想し、不安を感じていることを示している。
これによれば、3月6日金曜日のVIX指数(オレンジ色の丸)は12年前の金融危機(グラフ左の一番高いところ)後に6回ある山の高さの水準に差し掛かったところと言える。人々は今後30日にかなりの大きさで市場に変動があると予想しているのだ。さて、3月の今後は実際どうなるのだろうね?
この指数は「恐怖指数」などと呼ばれるし、「VIX」という言葉の響きがなんだか怖いので、大変危なっかしいものと思われがちである。しかしVIXとはもともとは「Volatility Index」の略であり、単なる市場の「変動性の指数」を意味するに過ぎない。そして私の経験則としては、市場が現実に荒れている時にこの指数は将来のさらなる荒れを予想して見せるが、たいていの場合、その後は人々の興奮も冷めて市場は静かになることが多い。今回もそうであることが望ましいなぁ。