あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

ジョン・ミリアス監督の「風とライオン」を観て

2013-08-21 09:55:52 | Weblog

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.547


時は20世紀の冒頭、「ライオン」はモロッコの砂漠を駆け抜けるアラブの怪傑ハリマオ、「風」は植民地闘争の全世界をつむじ風と共に制覇する米国の大統領セオドア・ルーズベルト。

この2人が、誘拐されたキャンデイス・バーゲンとその子供の解放を巡って敵対しながらその雄々しい生き方に共鳴し合うという西洋任侠物語である。

ルーズベルトは日露戦争を調停した「とめ男」としても知られているが、やるときはやる決断と実行のカウボーイぶりが全国民的な人気を呼んだらしい。この映画で描かれているようにけっこう国際的な慣行を無視した無茶苦茶な武力行使を辞さない男だったようだ。

一方ショーン・コネリー扮する族長はアラーの大義に生きる痛快無比な冒険者で、その男らしさにキャンデイス・バーゲンが惚れるのも無理からぬカッコ良さがある。

いずれにせよいかにも反共右翼を旗頭にするジョン・ミリアス好みの世界を股にかけた熱血男の友情国際国姓爺合戦噺で、かの石原慎太郎、安倍晋三一派なぞはその国粋的&武断的&八紘一宇的大東亜共栄圏的雄大スケールに泣いて喜ぶかもしれないが、粗い脚本のあちこちに歴史的事実を無視した荒唐無稽なヒロイズムが垣間見られ、心ある映画ファンの眉をひそめさせずにはおかないのである。


    六十八年戦争被害者を出さざりし日本国憲法はありがたきかな 蝶人
コメント
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