あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

吉田秀和述「名曲のたのしみ、吉田秀和第5巻」を読んで

2015-05-22 11:05:30 | Weblog


照る日曇る日第786回 


 おなじみ吉田翁のNHK-FMでの名解説シリーズであります。

 ともかく語りの内容と雰囲気とがぴったりマッチしていること小林秀雄や吉本隆明などの比ではない。だいいちあとの2人なぞいくら聴いても何を言っているのか分かった試しがないけれど、この道40年以上のプロに敵うはずもありませぬ。

 第2章「ドイツ・バロックからロマン派」ではかの楽聖ヴェートーヴェン最後の日についてのロマン・ロランの回想録の中の挿話が語られています。

 「1827年3月26日午後5時15分、突然一天俄かにかき曇り、稲妻が楽聖の部屋を揺るがせ、激しく光らせました。臨終の部屋に居たのは、シューベルトの友人だったアンゼルム・ヒュッテンブレンナーただ一人。

 彼は、楽聖が突然目を開き、右腕を伸ばして威嚇するようにこぶしを天にかざし、猛々しい顔つきで叫ぶ姿をみました。それは「私は君たちに負けはしないぞ!」と叫んでいるようでしたが、急に腕を垂れ、目が閉ざされました。彼は戦闘のさなかに倒れたのです」

 そしてロマン・ロランは、「これこそが彼の最後のシンフォニーーであった」と付け加えている。

 と吉田翁は紹介されているのですが、なんか私たち「ヴェートーヴェン最期の日」という映画をみせられているようで、劇的でドラマッチックな解説だと思いませんか。

 ハイ、もうお時間来ました。またどこかでお会いしましょうね。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。


  さようならはいサヨウナラ左様なら親しきひとが次々に死ぬ 蝶人
コメント
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