闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.818&819
スタンリー・キューブリック監督の「スパルタカス」をみて
一介の剣闘士カーク・ダグラスが奴隷解放を求めてローマ帝国に果敢な闘争を挑んだ反乱の1幕なり。磔刑に処せられたの主人公が、去りゆく妻ジーン・シモンズと息子をみやりつつ死んでゆくラストは何度見ても涙を誘う。
プロデューサーのダグラスと衝突したアンソニー・マンの降板で、急遽メガフォンをとったキューブリックは、ここでは恐らくはセシル・B・デミルに学んだハリウッドの正統的な歴史映画の遠景透視手法を踏襲しながら、ローマ史の珍重すべき逸話を悠揚迫らず描いている。
ところでこの映画には元老院の民衆派の指導者グラッカス役で傑作「夜の狩人」を演出したチャールズ・ロートンが出演している。
敵役のクラッサスを演じるイケメンのローレンス・オリビエと比べて、豚豚に太って風采の上がらないこの二流役者が、あの超絶的に美しい歴史的名画の監督であるとは容易に信じられないが、まぎれもない事実なのである。
チャールズ・ロートン監督の「夜の狩人」をみて
稀代の殺人犯にして偽宣教師役のロバート・ミッチャムの世紀の怪演が恐ろしくも見事なり。主人公の哀れな兄妹を匿う正義の老婦人リリアン・ギッシュが同じ讃美歌を合唱するシーンは鳥肌が立つ。
ミッチャムに殺されたシェリー・ウィンタースのオフェーリアのように長い髪が、藻と共に川の中で流れるシーン、ミッッチャムに追われて舟で流されてゆく少年少女を包む幻想的で耽美的な夜、彼らを追うミッ

「美は恐ろしきもののはじまり」とリルケが歌ったそのとおりの映像が、ここには滔々と流れてある。
嗚呼鮮烈1970年1月8日ジョージセルクリーブランドシベリウス2番生録 蝶人