きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

青年よ立ちあがれ! 非正規雇用問題の解決を語り合う

2007-07-22 12:52:38 | 働く権利・賃金・雇用問題について
「青年よ立ちあがれ」
「しんぶん赤旗」(7月16日から18日)に首都圏青年ユニオンの河添誠さんと作家の雨宮処凜さんの対談が載りました。

転載しますので、読んでみて下さい。


"奴隷"のように働かされ、使い捨てのモノのように扱われる現実に、着者たちは怒りに燃えて立ちあがりつつあります。そのたたかいの核になっている、首都圏青年ユニオンの河添誠書記長と若者の苦しみを告発しつづける雨宮処凛さんに「青年よ立ちあがれ」と.題して語りあってもらい.ました。
「しんぶん赤旗」(2007年7月16日付~18日付)

河添誠
1964年生まれ。2000年に首都圏青年ユニオン結成に参加。06年から現職。レイバーネット日本事務局長も務める。

雨宮処凛(あまみやかりん)
1975年生まれ。一時右翼活動に参加したが、その後離れ、現在は青年の非正規雇用問題を旺盛に取材執筆中。『生きさせろ!』ほか。

河添
雨宮さんの『生きさせろ!』は、自分の「生きづらさ」から入って、労働の問題、過労自殺などに迫っているところがユニークですね。

ホームレスに隣接した生活

雨宮
私が労働間題にかかわるきっかけというか、何だか日本がおかしくなっていると思ったのが、去年の四月でした。岐阜で三十代のフリーターが漫画喫茶3カ月泊まったのに、所持金は十六円しかなくて、料金十五万円を払えずに逮捕されたという新聞記事です。私たちの生活がホームレスと隣接しているんだと分かって、この問題に関心をもつようになりました。
今年のネットカフェ難民の調査はどうでした?

河添
いろんなケースがあって、ものすごく多様な人がいます。DV(夫婦間暴力)を受けている人や、借金で逃げている人とか。経済的な理由だけでなく、家庭に居場所がない人もネットカフェにきている。父親が生活保護を受けていて自分は日雇い派遣で、家はあるけど父親がいつもイライラしていて居場所がないという人とか。これも貧困の拡大だと思うんですけど。東京の高田馬場のネットカフェでは、平日夜の利用者の四割がいわゆる「難民」です。

雨宮
えーっ、四割ですか。

河添
高田馬場の駅前は、日雇い派遣の集合場所になっているんです。

雨宮
低賃金で不安定で危険な仕事をさせられている派遣労働者を取材して、本当に命が軽くなっていると感じました。いわゆるフリーターと呼ばれる派巡社員が過労自殺しているのには驚きました。

フリーターか過労死社員か

河添
派遣という働かせ方自体に間題がある。どうしても数合わせという感覚が現場で強いでしょう。派遣法の規制緩和の影響は大きい。われわれの把握できない悲劇が無数に起こっているでしょう。

雨宮
フリーターの人たちの取材を通して感じるんですが、デモとか団体交渉ができるとか、労働組合が作れるとか何も知らない。そもそも自分が労働者だってことも知らない。本当に何も教えられずに丸裸で社会に投げ出されているんだなって、自分を含めて実感します。

河添
学校で、会社から辞めて下さいといわれたらどうすればいいとか、国民年金と厚生年金の違いとか、そこすら教えていない。

雨宮
それでいて、フリーターにはなっちゃいけないという教育がされていますね。

河添
フリーターは悪で正社員はいいという。でも実際には正社員もどんどん賃金は落ちていて、長時間過密労働になっている。

雨宮
私の弟も過労死しそうになったんです。大手量販店の正社員で、仕事は朝8時から深夜.1時、2時まで。長時間労働で死にそうになるという現実を見て、本当にびっくりしました。これではホームレスを前提としたフリーターか、過労死を前提にした正社員かという選択になってしまいます。

河添
どっちもひどい。こういう状況でもいま、自分が声を上げるのはしんどいという人が増えている.じゃないですか。そこにアプローチしたらいいと思いますか。

コスプレデモ沿道から参加

雨宮
こないだ秋葉原でオタクが500人くらい集まったんですよ。表現の自由とか、規制反対を掲げ、コスプレしてデモやったら一、沿通からも人がどんどん入ってきて。「イデオロギーの負けで趣味の勝利だ」といわれました(笑い)。まずはいま、騒ぐことが必要かなって思うんです。

河添
すごく分かりますね。そんなことやっちゃだめだろうって、みんな思い込んでいるんですよ。ぼくらは牛丼の「すき家」に解雇撤回させて、残業代1万人分を払わせました。数億円規模です。しかし過去2年分は未払いなので「すき屋は残業代を払え」と店の前で宣伝するんです。横断幕をはっ.てパフォーマンスをしたり、渋谷のセンター街を練り歩いたり。それを見た人がびっくりして、あ、そういうのをやっていかって思うようになる。やっていいんですよ。全労連のHPのビデオニュースに動画があるので見てくたさい。(笑い)

雨宮
非正規でもフリーターでも一人でも入れる組合というのは前からあったんですか。

河添
ありましたよ。

雨宮
私が知ったのは首都圏青年ユニオンが初めて。

河添
若者向けをうたったのは、多分ぼくらが初めてなんです。

雨宮
私たちフリーターから見ると、旧来の労働組合は特権階級のように見えるんですね。そこの断絶がすごい。

河添
異なる世代同士、正規と非正規の関係は丁寧に議論した方がいい気がします。1つのパイを奪い合って、あっちが守られているからこっちが損しているという単純なものではない。

雨宮
一人でも入れるフリーター対象の労働組合があることで、私も全然見方が変わってきました。労働運動がこんなに面白くて、こんなにどっぷりかかわるとは思わなかった。(笑い)

雑誌があおる「希望は戦争」

河添
フリーターの赤木智弘さんが『論座』で書いた「希望は戦争」という議論ですけど主張自体は新しくもないし、そんなに広まっているとも思わなかった。雑誌があおっていますね。いまのフリーターや非正規雇用の増加を「ロストジェネレーション」とか「ポストバブル」の世代論にするのは非常に問題がある。

雨宮
世代論にすると終わった話になってしまいますよね。

河添
非正規の拡大は政策的に誘導されている。いま景気回復局面だけど、雇用が元に戻るかといえば、絶対元に戻らない。今度は労働ビッグバンだといってもっと悪くなる。

雨宮
赤木さんと話した時、戦争が起きなかったらどうなりますかときくと十年後に自殺するというのです。今は実家にいるけど、十年後に父が働けなくなったときが自分の寿命だと。そういう人がほかにも結構いる。結局、家族でなんとかしろと言われている。全部悪いのは国ですけどね。

河添
親と同居しているから成り立っているフリーターの低賃金ですよね。

雨宮
この前も四十代のフリーターから「本当に生殺しで、戦争起こってほしい」とメールがきました。逆に、今まで右翼の愛国的な方に行っていた人が、これを読んで「今まで愛国で自分をごまかしていたけれど、これからは使い捨て労働力である自分を認めます」というのも聞きます。

河添
それは面白いですね。

雨宮
このまま行けば自殺だけど、戦争に行けば恩給と名誉が得られるというのも、切実だなと思いましたね。

河添
生きていることに自信が持てないし、誰にも評価されない、それがこれから先も続くんじゃないかという絶望の深さですよね。

新自由主義と敵がはっきり

雨宮
「生きづらさ」とか自殺とか、精神的不安定の問題ばかりやっていたんですが、去年初めてプレカリアート(不安定な労働者=非正規雇用)という言葉と出合って、新自由主義という敵がはっきりしました。九五年の日経連の「新時代の日本的経営」が、フリーターの時の私の自殺未遂とつながっているとは思いもしませんでした。私のまわりの自殺者もこういうことで死んでいたんだと。少し前まで一億総中流だと思っていたのに、こんなに世界が変わっていたなんて。でも敵が見えたことですごい楽になりました。

いま世の中が優しくないことを感じますね。多重債務者やホームレスは全然自己責任じゃないのに、彼らは甘えているという人がまだいる。社会全体に余裕がない。

河添
ほんとうにそうですね、貧困を今度の選挙でどこまで争点にできるか。ぼくたちも参加している反貧困キャンペーンはそれが最大の目的です。どの政党、候補者にもまず実態を知ってほしい。貧困は大変ですね、格差は大変ですねと形式的にいうけれどきれいごとですまない。

モラルいうなら企業・財界こそ

雨宮
フリーターやニートにモラルがないようにわれますが、企業・財界こそモラルがない、違法行為をしている企業はどんどん摘発してほしい。経団連の御手洗会長(キヤノン会長)なんて今すぐ捕まってもいいんじゃないか。悪いことをしている企業が保護されて、末端で働く人がどうして大変な思いをしなければいけないのか。求人広告もウソばっかりですしね。人さらいみたいに連れてきて。

河添
月給30万円以上とか、まさに「甘言を弄して」。戦前の日本が朝鮮半島から拉致してきたのとそっくりですよ。

雨宮
なんでこんな派遣会社の天下になっているのか。99年に労働者派遣を自由化(製造業をのぞく)したのが.番大きいですよね。そのとき民主党はもちろん、社.民党も賛成していたのは、知らなかったですね。

河添
社民党はいまも2003年改定(製遣業に労働者派遣を解禁)の前に戻せと言うだけなんですよ。
99年改悪に反対という考えではない。

雨宮
99年改感に共産党だけが反対していたのは知らなかった。(一連の労働法制の規制緩和の)全部に反対している(笑い)。当時はまだ派遣がいいものというイメージがありましたね。

河添
失業問題は大きくなっていたけれど貧困という見え方ではなかった。

雨宮
この前、30代のフリーターと話したら、彼の夢が年収300万円だったんです。いまは100万円台。300万円なんて、それ夢じゃないだろうと。そんなちっほけな夢もかなえられない。国なのか若者の雇用が崩されたままでは未来がないと思います。非正規の人たちが結婚もできず、子どももできず、都内がスラム化していって、最悪のことしか思い描けない。政冶にはせめて年収300万円を働く人に保障することを求めたいですね。

現実を変える力運動をとおして

河添
最低賃金や生活保障の問題は生きるために最低限必要ですが、もう一つ必要なのは労働時間の規制です。共産党の緊急提案(三月)のなかに、一日の労働時間規制をする。最低十一時間の連続休息時間を確保するとあります。つまり夜十二時まで働いたら、翌日は午前十一時前には出勤しない。これはEU(欧州連合)もそうなんです。民主党も同じ政策をだしています。共産党はこの間の労働者派遣法の規制緩和に対して正しい判断をしてきたので、さらに具体的な規制を実現するネットワークを作る努力をしてほしい。ぼくらも運動の中で現実を変える力関係をつくっていきたいと思います。