マイケル・ムーア監督の新作映画「キャピタリズム~マネーは踊る~」が話題を呼んでいる・・・
ブッシュ大統領のイラク戦争を痛烈に批判した「華氏911」。アメリカの医療保険の実態に鋭いメスを入れた「シッコ」。
1作ことに話題を呼ぶマイケル・ムーア監督(55)が、今度は、「キャピタリズム(資本主義)~マネーは踊る~」で、強欲資本主義に迫ります。新作の公開を前に初来日したムーア監督は、記者会見(11月30日)で、熱く語りました。
会見は、ムーア監督が入国の際、税関で指紋を取られることを知り、抵抗したてん末から始まりました。「誰もが、時には自分の権利のために立ち上がらなければならない」というユーモアたっぷりのムーア節。
信頼寄せる人
デビュー作以来20年。約束なしに不意打ちの突撃取材を重ねる作品を次々送り出し、すっかり有名になったムーア監督。「企業のトップや権力の座にある人たちは、僕と話をしたがらないので、彼らの取材をするのは大変厳しい」と言います。
一方で、大企業や権力者を遠慮なく批判する監督に信頼を寄せる人たちがいます。その人たちからは、続々と投書や資料が届き、「取材が楽になった」とも。
そのなかの一つの映像が、「キャピタリズム~マネーは踊る~」の冒頭に使われています。銀行に差し押さえられた家に近付く車列。ドアのかぎをたたき壊す音。保安官に自宅からの強制退去を迫られるさまを家の中から撮り続けたノースカロライナ州の一家が、ビデオを届けてくれたのです。「ムーアに送るのが一番、と送ってくださった。とてもありがたい」と。
低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)の破たん以降、今やアメリカでは、「7秒半ごとに、家が1軒差し押さえに遭い、強制退去させられている」、その生々しい実例です。
「キャピタリズム~マネーは踊る~」は、2時間7分のドキュメンタリー。丹念な取材で、富と力ある者の横暴を突き、貧者に優しいまなざしはここでも生きています。
銀行や企業の倒産で突然クビになった労働者。家族に内緒で社員に生命保険をかけ、その死でもうける大企業・・・。利潤本位の社会であえぐ人々を映し出します。新自由主義のはしりとなったレーガン大統領以来の弱肉強食の経済政策がもたらした国民の実態です。
金融業界トップが政権の中枢に座り、自分たちに都合よく規制緩和を進めたあげくの、アメリカ経済の破たんを映像ならではの迫力で見せていきます。
ところが、金融危機を招いた投資銀行や保険会社は、議会の後ろ盾によって国民の税金7千億ドル(約63兆円)で救済されます。1%の富裕層が、99%の庶民を虐げるアメリカ社会。いったい税金はどこへ。ムーア監督の怒りはニューヨークのウォール街に。さらには、不当な処遇に屈せず立ち上がった人々を追って、意気高くともにたたかおうと呼びかけます・・・。
ムーア監督は、「いろんな文明国の中で、アメリカの現状は、なぜこんなに目をおおいたくなるものなのか。その疑問を永遠のテーマとして自作で描いているつもり」と会見で語りました。
日本は侵略戦争を支援しないで
この映画の中に、日本が数分だけ紹介されます。敗戦で新しい憲法を持った国として-。
まねをしないで
会見で、日本人へのメッセージは、と聞かれて、こう語りました。
「アメリカでエルビス(・プレスリー)のまねをしてくださった首相がいました」。その首椙も含め、保守的な首椙が代々続いて、犯罪率、失業率も高くなり、日本がアメリカと同じようになってきている。けれど、アメリカをまねないで、「BE JAPAN」(日本は日本のままでいてください)、と。
語り口にだんだん熱がこもります。
「教育の価値を十分大切だと思った日本、解雇はしないと言った日本になってください。他国に一切侵略しない、他国を侵略しようとしている国を一切サポートしないと言った国に戻ってください」
さらに、世界中の人々が苦しんでいる理由の一つは、ブッシュ前政権にあると言い、その戦争政策を支えた日本をはじめとする諸国の責任も問いました。
ムーア監督は、最後に、映画にも登場した88歳の父親の話をしました。父親は、太平洋戦争中、沖縄に駐留し、おじは、フィリピンで戦死しています。
父親は、オバマ大統領が、アフガニスタンでの今後の戦争政策について1日に発表する前に、要望を送った、といいます。“オバマ大統領、あなたは戦争をご存じない。戦争を知っているわれわれは、もう戦争は欲しくない”と。
「世の中は絶対良くなると信じている」。常に大きな希望と楽観的な考え方を持っている、と信条を語ったムーア監督。「いつの日かわれわれが、戦争を知らない人間になれることを願っています」とのべ、こう結びました。
「日本の方々と平和への願い、平和へのメッセージを分かち合えることを大変うれしく思います。戦後60年以上、日本の方々は平和への旗手として活躍していらっしゃったと僕は思います」
「しんぶん赤旗」日曜版(2009年12月6日付けで紹介)
12月5日から、東京・TOHOシネマズシャンテ、大阪・TOHOシネマズ梅田で公開されます。
全国での上映は来年の1月9日からのようです。
近い大阪梅田に、見に行きたいですね!
ブッシュ大統領のイラク戦争を痛烈に批判した「華氏911」。アメリカの医療保険の実態に鋭いメスを入れた「シッコ」。
1作ことに話題を呼ぶマイケル・ムーア監督(55)が、今度は、「キャピタリズム(資本主義)~マネーは踊る~」で、強欲資本主義に迫ります。新作の公開を前に初来日したムーア監督は、記者会見(11月30日)で、熱く語りました。
会見は、ムーア監督が入国の際、税関で指紋を取られることを知り、抵抗したてん末から始まりました。「誰もが、時には自分の権利のために立ち上がらなければならない」というユーモアたっぷりのムーア節。
信頼寄せる人
デビュー作以来20年。約束なしに不意打ちの突撃取材を重ねる作品を次々送り出し、すっかり有名になったムーア監督。「企業のトップや権力の座にある人たちは、僕と話をしたがらないので、彼らの取材をするのは大変厳しい」と言います。
一方で、大企業や権力者を遠慮なく批判する監督に信頼を寄せる人たちがいます。その人たちからは、続々と投書や資料が届き、「取材が楽になった」とも。
そのなかの一つの映像が、「キャピタリズム~マネーは踊る~」の冒頭に使われています。銀行に差し押さえられた家に近付く車列。ドアのかぎをたたき壊す音。保安官に自宅からの強制退去を迫られるさまを家の中から撮り続けたノースカロライナ州の一家が、ビデオを届けてくれたのです。「ムーアに送るのが一番、と送ってくださった。とてもありがたい」と。
低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)の破たん以降、今やアメリカでは、「7秒半ごとに、家が1軒差し押さえに遭い、強制退去させられている」、その生々しい実例です。
「キャピタリズム~マネーは踊る~」は、2時間7分のドキュメンタリー。丹念な取材で、富と力ある者の横暴を突き、貧者に優しいまなざしはここでも生きています。
銀行や企業の倒産で突然クビになった労働者。家族に内緒で社員に生命保険をかけ、その死でもうける大企業・・・。利潤本位の社会であえぐ人々を映し出します。新自由主義のはしりとなったレーガン大統領以来の弱肉強食の経済政策がもたらした国民の実態です。
金融業界トップが政権の中枢に座り、自分たちに都合よく規制緩和を進めたあげくの、アメリカ経済の破たんを映像ならではの迫力で見せていきます。
ところが、金融危機を招いた投資銀行や保険会社は、議会の後ろ盾によって国民の税金7千億ドル(約63兆円)で救済されます。1%の富裕層が、99%の庶民を虐げるアメリカ社会。いったい税金はどこへ。ムーア監督の怒りはニューヨークのウォール街に。さらには、不当な処遇に屈せず立ち上がった人々を追って、意気高くともにたたかおうと呼びかけます・・・。
ムーア監督は、「いろんな文明国の中で、アメリカの現状は、なぜこんなに目をおおいたくなるものなのか。その疑問を永遠のテーマとして自作で描いているつもり」と会見で語りました。
日本は侵略戦争を支援しないで
この映画の中に、日本が数分だけ紹介されます。敗戦で新しい憲法を持った国として-。
まねをしないで
会見で、日本人へのメッセージは、と聞かれて、こう語りました。
「アメリカでエルビス(・プレスリー)のまねをしてくださった首相がいました」。その首椙も含め、保守的な首椙が代々続いて、犯罪率、失業率も高くなり、日本がアメリカと同じようになってきている。けれど、アメリカをまねないで、「BE JAPAN」(日本は日本のままでいてください)、と。
語り口にだんだん熱がこもります。
「教育の価値を十分大切だと思った日本、解雇はしないと言った日本になってください。他国に一切侵略しない、他国を侵略しようとしている国を一切サポートしないと言った国に戻ってください」
さらに、世界中の人々が苦しんでいる理由の一つは、ブッシュ前政権にあると言い、その戦争政策を支えた日本をはじめとする諸国の責任も問いました。
ムーア監督は、最後に、映画にも登場した88歳の父親の話をしました。父親は、太平洋戦争中、沖縄に駐留し、おじは、フィリピンで戦死しています。
父親は、オバマ大統領が、アフガニスタンでの今後の戦争政策について1日に発表する前に、要望を送った、といいます。“オバマ大統領、あなたは戦争をご存じない。戦争を知っているわれわれは、もう戦争は欲しくない”と。
「世の中は絶対良くなると信じている」。常に大きな希望と楽観的な考え方を持っている、と信条を語ったムーア監督。「いつの日かわれわれが、戦争を知らない人間になれることを願っています」とのべ、こう結びました。
「日本の方々と平和への願い、平和へのメッセージを分かち合えることを大変うれしく思います。戦後60年以上、日本の方々は平和への旗手として活躍していらっしゃったと僕は思います」
「しんぶん赤旗」日曜版(2009年12月6日付けで紹介)
12月5日から、東京・TOHOシネマズシャンテ、大阪・TOHOシネマズ梅田で公開されます。
全国での上映は来年の1月9日からのようです。
近い大阪梅田に、見に行きたいですね!