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きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

地球~イトカワ 宇宙60億キロの旅②

2011-05-11 22:19:09 | 科学だいすき
地球~イトカワ 宇宙60億キロの旅②

科学技術は「加点法」
小惑星探査機はやぶさ責任者
川口淳一郎さんに聞く

はやぶさの探査は、チャレンジ精神にとんだ計画でしたね。

川ロ プロジェクトの提案段階から挑戦的でした。日本の実力で堅実に行こうと思ったらとてもできないことを、「こういう方法ならできる」と。そして、こだわりと意地が大事だったと思います。「やるべきことを、すべてやり尽くしたのか」ということの自己点検の意味で、“神だのみ”もしました。
 ハイリスク・ハイリターンの新しいことへの挑戦は、科学・技術に限らずあらゆる分野で大切だと思います。何かを少しずつ積み上げていくと全体が太って、ついにどこかを突破するということはありえない。どの分野でも、何かを革新的に進めるためには、地道な努力も必要ですが、やはり思い切った挑戦がないと実現しません。



7年間のオペレーションを終えた、はやぶさの運用室(JAXA提供)

挑戦する活動へ
はやぶさ計画を国の予算として認めるかどうかで、宇宙開発委員会は“加点法”で評価し、ゴーサインを出しましたね。

川口 加点法は「挑戦するべきだ」という意思表示になります。だから挑戦する活動ができるのです。行政はそういう考え方で、途中までに得られた成果も生かす視点が大切です。地球に帰還できなければ減点というような、最初から天井を定めて、満点が取れるか、何が欠けているかをみる“減点法”ではダメだと思うのです。「世界初」をめざす活動を、国が裏切ることのないようにしてほしい。
 私はよく「ミミのない煎餅をつくるな」という例え話をします。煎餅の「型」に材料を流し込むと、はみだしてミミができる。最近、予算をギリギリまでカットして無駄を省こうと、事業仕分けをしています。予算1億円の「JAXAi」(東京・丸の内にあった広報施設)を切った。確かに「煎餅のミミ」を1億円くらいは切り取れました。
でも、煎餅の型に材料を入れるときに、ちょうど1枚分を入れたらミミはできないかもしれないけど、絶対に煎餅は型よりも大きくなりませんね。
 事業仕分けを政府がやると民間まで始めるのをみて、私は恐ろしくなりました。一生懸命、煎餅のミミを切り取っていくことが、将来をつくる道だと思わない。だんだん負の悪循環に入っていくだけです。ミミがあるからこそ、煎餅は大きく広がっていけるのです。


ミッション達成度〈加点法〉
▽50点…電気推進エンジン(イオンエンジン)稼働開始(3台同時運転は世界初)【達成】
▽100点…電気推進エンジン1000時間稼働【達成】
▽150点…地球スウィングバイ成功(電気推進では世界初)【達成】
▽200点…自律航法でイトカワとランデブー成功【達成】
▽250点…イトカワの科学観測成功【達成】
▽275点…イトカワに離着陸して岩石試料採取【達成】
▽400点…地球帰還。大気圏に突入してカプセル回収【達成】
▽500点…イトカワの試料を入手【達成】



オーストラリアに軟着陸した、小惑星探査機「はやぶさ」の着陸カプセル(JAXA提供)

国民スポンサー
科学・技術のあり方について、どう考えますか。

川口 研究者と政府と国民の関係は、演奏家と興行主と聴衆の関係と同じだと、私は思います。演奏家はレベルの高い演奏をしたいと思い、興行主は少し簡単な曲でもいいから文化の向上をめざす。聴衆は案外、別の曲を聴きたいかもしれない。それぞれ微妙なずれがあるのです。お互いにレベルアップできればいいのですが、忘れがちなのは、スポンサトが聴衆である国民だということです。
 研究者が挑戦するのはいいが、成果は国民に向かなければいけないし、国民へのわかりやすさも必要です。国に希望するのは、ポリシーをもって長期展望をみせてほしいということ。国民は、研究や文化にたいして、また国がポリシーをもって進むことにたいして、よき理解者であってほしい。三者が相互に理解することがないと、うまく進まないのではないでしょうか。



木星のそばを通り過ぎるソーラー電力セイル探査機の想像図(JAXA提供、池下章裕さん)

最後に、宇宙探査の将来像について教えてください。
川口 次に狙いたいのは、新しい推進機関「ソーラー電力セイル」で飛ぶ宇宙船による「トラヤ群」という小惑星の探査ミッションです。
 これまでどこかにあった技術をもってくるのではありません。私たちが実証した、はやぶさの電気推進エンジンと、「イカロス」のソーラーセイル(太陽帆)とを融合した新しい技術です。1990年代から、ずっと続けてきた研究です。
宇宙探査の領域は、尽きることはないと思っています。まずは数年の飛行で届くところをめざしたいですね。(おわり)


宇宙ヨット「イ力口ス」
 14メートル四方の帆を宇宙空間に広げ、太陽光の圧力を受けて進む、燃料のいらない夢の宇宙船。JAXAが2010年5月に鹿児島から打ち上げました。太陽光圧で推進するソーラーセイル(太陽帆)の着想は100年ほど前からありましたが、実現したのはイカロスが初めて。操縦技術の向上をめざし、現在も運用中です。


「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年5月7日付掲載

科学技術は「加点法」ですか。いい思考ですね。活動にも反映させていきたいと思いました。
それにしても、民主党政府の事業仕分けって、いかにみみっちいかが分かります。1億円は確かに削れたかもしれませんが、それ以上に可能性を削っているような気がします。

宇宙ヨット「イカロス」にも第2次バージョンがあるんですね。ギリシャ神話の太陽に向かって飛ぼうとした神の名を借りた「イカロス」。夢がありますね。
コメント (1)
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