そもそも税金講座⑪ 消費増税で財政よくなる? 景気どん底、全体の税収減る
ギリシャと違う
ギリシャの財政危機は、ギリシャ国債の7割以上を保有する海外投資家が国債を手放したことによる金融不安です。ギリシャと異なり、日本国債は9割以上が国内投資家の保有です。だから、ギリシャのように海外投資家の思惑による金融不安が生ずることはありません。
とはいっても、日本の国税と地方税の収入は、対GDP(国内総生産)でみると、OECD(経済協力開発機構)に加盟している国で最低水準です。財政状態を立て直さなくては、社会保障の財源は生まれません。
消費税増税で財政は、決して好転しません。消費税を増税すれば消費税収は増えますが、税全体の収入は減ってしまうのです。消費税負担が増えれば、使える金が減り、消費が落ち込み、景気が悪くなります。
景気の回復を税制で保障するには、所得課税(所得税・法人税)を中心に据えて、それらを応能負担原則に沿ったものにすることが必要です。
消費税の導入によって、応能原則に基づく所得課税中心の道から外れました。大企業や資産家への大減税と消費の落ち込みによって、所得税・法人税が1990年度に比べ、2012年度は22兆円以上も減ったのです。(表)
1990年度と2012年度の所得税・法人税の収入額比
適正な法人税収を確保するには、大企業優遇措置をなくし、現行の所得税の税率程度の6段階の超過累進税率(5~40%)を採用することが重要です。ところが、政府は消費税を増税することを見越して、11年度の税制改定で法人税率を30%から25.5%に下げてしまいました。こんなことをしては、全体の税収が増えるはずがありません。
97年に消費税率を2%上げたときには、消費税以外の税収は減りました。96年度には国・地方の税収が90.3兆円ありましたが、10年度は76.2兆円ですから、14兆円以上減っています。(図)
消費税が増税されれば日々の買い物に影響が…
大企業優遇措置
減収の原因は、消費税率2%引き上げと医療費値上げなどの9兆円の負担増で消費が冷え込み、景気をどん底に突き落として長期不況に陥ったことです。もう一つは、法人税率の引き下げ、所得税・住民税・椙続税・贈与税の税率引き下げ、証券優遇税制などの大企業・金持ち減税を行ったことです。
今回は税率を5%引き上げるのですから、97年不況の比ではありません。空前の景気悪化が予想されます。景気悪化の影響をもろに受ける中小企業からの所得税・法人税の税収は期待できません。10%への増税は、財政をさらに悪化させることになります。
景気回復のカギを握る個人消費を拡大するには、消費税率の引き下げ、雇用などの将来不安を解消することです。
国、地方自治体、企業、団体、家庭を問わず、財政を好転させるには、収入と支出のバランスを考えなくてはなりません。しかも、国や地方の財政再建は、単純に収支バランスをとればよいのではなく、国民の暮らしや福祉をきちんと守らなくてはなりません。
歳入は、大企業・高額所得者優遇の不公平税制を是正し、応能負担による税制を確立して税収を確保する。歳出は、不用な大型公共事業・軍事費・政党助成金・原発推進費の削減をする。このような政策に本気で取り組むことこそ、財政健全化の道です。
「しんぶん赤旗」日曜版 2012年7月1日付掲載
消費税増税で消費税分の税収は増えますが、不景気になって逆に全体の税収が減るんですね。
ギリシャと違う
ギリシャの財政危機は、ギリシャ国債の7割以上を保有する海外投資家が国債を手放したことによる金融不安です。ギリシャと異なり、日本国債は9割以上が国内投資家の保有です。だから、ギリシャのように海外投資家の思惑による金融不安が生ずることはありません。
とはいっても、日本の国税と地方税の収入は、対GDP(国内総生産)でみると、OECD(経済協力開発機構)に加盟している国で最低水準です。財政状態を立て直さなくては、社会保障の財源は生まれません。
消費税増税で財政は、決して好転しません。消費税を増税すれば消費税収は増えますが、税全体の収入は減ってしまうのです。消費税負担が増えれば、使える金が減り、消費が落ち込み、景気が悪くなります。
景気の回復を税制で保障するには、所得課税(所得税・法人税)を中心に据えて、それらを応能負担原則に沿ったものにすることが必要です。
消費税の導入によって、応能原則に基づく所得課税中心の道から外れました。大企業や資産家への大減税と消費の落ち込みによって、所得税・法人税が1990年度に比べ、2012年度は22兆円以上も減ったのです。(表)
1990年度と2012年度の所得税・法人税の収入額比
税目 | 1990年度決算① | 2012年度政府予算案② | 増減(②-①) |
所得税 | 26兆円 | 13兆4910億円 | ▲12兆5090億円 |
法人税 | 18兆4000億円 | 8兆8080億円 | ▲9兆5920億円 |
合計 | 44兆4000億円 | 22兆2990億円 | ▲22兆1010億円 |
適正な法人税収を確保するには、大企業優遇措置をなくし、現行の所得税の税率程度の6段階の超過累進税率(5~40%)を採用することが重要です。ところが、政府は消費税を増税することを見越して、11年度の税制改定で法人税率を30%から25.5%に下げてしまいました。こんなことをしては、全体の税収が増えるはずがありません。
97年に消費税率を2%上げたときには、消費税以外の税収は減りました。96年度には国・地方の税収が90.3兆円ありましたが、10年度は76.2兆円ですから、14兆円以上減っています。(図)
消費税が増税されれば日々の買い物に影響が…
大企業優遇措置
減収の原因は、消費税率2%引き上げと医療費値上げなどの9兆円の負担増で消費が冷え込み、景気をどん底に突き落として長期不況に陥ったことです。もう一つは、法人税率の引き下げ、所得税・住民税・椙続税・贈与税の税率引き下げ、証券優遇税制などの大企業・金持ち減税を行ったことです。
今回は税率を5%引き上げるのですから、97年不況の比ではありません。空前の景気悪化が予想されます。景気悪化の影響をもろに受ける中小企業からの所得税・法人税の税収は期待できません。10%への増税は、財政をさらに悪化させることになります。
景気回復のカギを握る個人消費を拡大するには、消費税率の引き下げ、雇用などの将来不安を解消することです。
国、地方自治体、企業、団体、家庭を問わず、財政を好転させるには、収入と支出のバランスを考えなくてはなりません。しかも、国や地方の財政再建は、単純に収支バランスをとればよいのではなく、国民の暮らしや福祉をきちんと守らなくてはなりません。
歳入は、大企業・高額所得者優遇の不公平税制を是正し、応能負担による税制を確立して税収を確保する。歳出は、不用な大型公共事業・軍事費・政党助成金・原発推進費の削減をする。このような政策に本気で取り組むことこそ、財政健全化の道です。
「しんぶん赤旗」日曜版 2012年7月1日付掲載
消費税増税で消費税分の税収は増えますが、不景気になって逆に全体の税収が減るんですね。