国際経済の民主的秩序② 多国籍企業の税逃れに網
9月にロシアのサンクトペテルブルクで開かれた主要20力国・地域(G20)首脳会議は多国籍企業による課税逃れの問題を取り上げました。首脳宣言は「すべての納税者が応分の税を支払う」ことを「かつてないほどの優先課題」と位置づけ、次のように呼びかけました。
「多国籍企業が低税率の国・地域に利益を人為的に移転することによって支払う税の総額を削減することを国際的な、および自国の課税ルールが許容または奨励しないことを要請する」
タックスヘイブンに利用されるケイマン島のビル。多国籍企業の名が並びます(西村央撮影)
「税源侵食」対策
首脳宣言は、経済協力開発機構(OECD)が決めた「税源侵食・利益移転」対策の行動計画に各国の参加を求めました。
「利益移転」とは多国籍企業がタックスヘイブン(租税回避地)などに利益を移して課税逃れをすること、「税源侵食」はその結果、各国政府の財源に穴が開くことを意味します。この問題は6月に英国で開かれた主要8力国(G8)首脳会議でも議題になりました。多国籍企業による税逃れはG8各国の支配層にとっても無視できないものになっています。
米上院では情報機器メーカー、アップル社の課税逃れについて報
告書が出され、5月には経営陣が公聴会に召喚されました。英国では米国から進出したコーヒー店チェーン、スターバックスが2009年以降、法人税を払っていないことに国民の怒りが高まり、デモ行進も行われました。
G20やOECDの動きはこうした各国世論に突き動かされてのことです。
OECDの行動計画は外国子会社があげた利益の合算や課税対象の扱いの是正など15項目の課題を列挙しました。税の抜け穴をふさぐ具体策を15年末までにまとめます。
多国籍企業はタックスヘイブンへの利益移転だけでなく、法人税率の低い国に進出することで課税逃れをしています。1990年代から各国政府は多国籍企業の投資を呼び込むため、競って法人税率を下げ続けました。
その一方、各国の税収は減り続けています。OECDによると、加盟国の税収(社会保険料を除く)の国内総生産(GDP)比は2000年の26・3%から10年には24・6%に低下しました。日本は16・3%と加盟34力国中、下から3番目の低さです(10年)。
にもかかわらず経団連など財界は法人税率をアジア近隣諸国並みにさらに引き下げよと要求しています。アジア諸国の法人実効税率は中国25%、韓国24%、シンガポールー7%です(13年4月現在)。
これを目標にするなら、日本の法人税率は際限なく下がらざるをえません。つけは税収不足や消費税などの庶民増税となって国民にはね返ってきます。
「有害な税競争」
OECDはすでに1998年、法人税引き下げ競争などを「有害な税の競争」と呼んだ報告書をまとめています。報告書は多国籍企業による税逃れの結果、労働者が払う所得税や消費税が重くなる弊害を指摘し、国内法、租税条約、国際協力の3分野で対策を講じるよう提起しました。その後、多国籍企業の意を受けた米国のブッシュ前政権が取り組みに反対したこともあり、法人税引き下げ競争への対策は進みませんでした。
しかし、法人税引き下げ競争による税収の空洞化は欧州の政府債務危機でも問題になり、2011年にはドイツとフランスが「法人税の最低税率の導入」を共同提案しました。G20でも、多国籍企業の国境を超えた活動に対する国際課税の必要性が取り上げられるようになっています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年12月19日付掲載
多国籍企業が、タックスヘイブンに本社機能を形だけ移して、税逃れをすることは持っての他ですが、国内の企業への法人税引き下げ競争も許されませんね。
まさに、税収の空洞化を自らやっているものです。
9月にロシアのサンクトペテルブルクで開かれた主要20力国・地域(G20)首脳会議は多国籍企業による課税逃れの問題を取り上げました。首脳宣言は「すべての納税者が応分の税を支払う」ことを「かつてないほどの優先課題」と位置づけ、次のように呼びかけました。
「多国籍企業が低税率の国・地域に利益を人為的に移転することによって支払う税の総額を削減することを国際的な、および自国の課税ルールが許容または奨励しないことを要請する」
タックスヘイブンに利用されるケイマン島のビル。多国籍企業の名が並びます(西村央撮影)
「税源侵食」対策
首脳宣言は、経済協力開発機構(OECD)が決めた「税源侵食・利益移転」対策の行動計画に各国の参加を求めました。
「利益移転」とは多国籍企業がタックスヘイブン(租税回避地)などに利益を移して課税逃れをすること、「税源侵食」はその結果、各国政府の財源に穴が開くことを意味します。この問題は6月に英国で開かれた主要8力国(G8)首脳会議でも議題になりました。多国籍企業による税逃れはG8各国の支配層にとっても無視できないものになっています。
米上院では情報機器メーカー、アップル社の課税逃れについて報
告書が出され、5月には経営陣が公聴会に召喚されました。英国では米国から進出したコーヒー店チェーン、スターバックスが2009年以降、法人税を払っていないことに国民の怒りが高まり、デモ行進も行われました。
G20やOECDの動きはこうした各国世論に突き動かされてのことです。
OECDの行動計画は外国子会社があげた利益の合算や課税対象の扱いの是正など15項目の課題を列挙しました。税の抜け穴をふさぐ具体策を15年末までにまとめます。
多国籍企業はタックスヘイブンへの利益移転だけでなく、法人税率の低い国に進出することで課税逃れをしています。1990年代から各国政府は多国籍企業の投資を呼び込むため、競って法人税率を下げ続けました。
その一方、各国の税収は減り続けています。OECDによると、加盟国の税収(社会保険料を除く)の国内総生産(GDP)比は2000年の26・3%から10年には24・6%に低下しました。日本は16・3%と加盟34力国中、下から3番目の低さです(10年)。
にもかかわらず経団連など財界は法人税率をアジア近隣諸国並みにさらに引き下げよと要求しています。アジア諸国の法人実効税率は中国25%、韓国24%、シンガポールー7%です(13年4月現在)。
これを目標にするなら、日本の法人税率は際限なく下がらざるをえません。つけは税収不足や消費税などの庶民増税となって国民にはね返ってきます。
「有害な税競争」
OECDはすでに1998年、法人税引き下げ競争などを「有害な税の競争」と呼んだ報告書をまとめています。報告書は多国籍企業による税逃れの結果、労働者が払う所得税や消費税が重くなる弊害を指摘し、国内法、租税条約、国際協力の3分野で対策を講じるよう提起しました。その後、多国籍企業の意を受けた米国のブッシュ前政権が取り組みに反対したこともあり、法人税引き下げ競争への対策は進みませんでした。
しかし、法人税引き下げ競争による税収の空洞化は欧州の政府債務危機でも問題になり、2011年にはドイツとフランスが「法人税の最低税率の導入」を共同提案しました。G20でも、多国籍企業の国境を超えた活動に対する国際課税の必要性が取り上げられるようになっています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年12月19日付掲載
多国籍企業が、タックスヘイブンに本社機能を形だけ移して、税逃れをすることは持っての他ですが、国内の企業への法人税引き下げ競争も許されませんね。
まさに、税収の空洞化を自らやっているものです。