きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

国際経済の民主的秩序① G20が巨大銀行を規制

2013-12-21 17:13:13 | 国際政治
国際経済の民主的秩序① G20が巨大銀行を規制

民主的な国際経済秩序を築く新しい流れが強まっています。多国籍企業の勝手放題を規制して、各国民の暮らしを守るルールづくりです。
1970年代から国際経済を仕切ったのは欧米と日本など6~8力国を中心とする「サミット」(主要国首脳会議)体制でした。しかし、90年代以降、新興国が世界経済での重みを増すにつれ、「先進国」だけでは世界の経済秩序を決められなくなってきました。
決定的だったのが2008年秋に起きたリーマン・ショックでした。世界的な経済・金融危機を引き起こしたのがほかならぬサミット体制の中心、米国だったからです。「先進国」だけでは、投機マネーが引き起こす世界経済の混乱を防ぐことができないことがはっきりしました。そこで08年11月に発足したのが新興国を含めた主要20力国・地域(G20)首脳会議を中心とする体制です。発足以来、今まで8回の首脳会議が開かれました。
G20参加国が世界に占める比重は人口で3分の2、国内総生産(GDP)で85%、貿易額で75%です。



FSBが監視対象としている重要金融機関の一つ、三菱UFJフィナンシャル・グループ(東京都千代田区)

日本3メガ行も
リーマン・ショック以後、世界経済の重要課題となったのが巨大金融機関への規制問題でした。多国籍化した大銀行によるマネーゲームを監視するには、各国政府それぞれの管理・監督では限界があります。国際通貨基金(IMF)も監視役を果たしませんでした。G20は新しい国際機関として09年に金融安定理事会(FSB)を立ち上げました。
FSBにはG20参加国の政府・中央銀行・金融当局のほかIMF、国際決済銀行(BIS)、経済協力開発機構(OECD)などの国際機関が参加。FSBが中心となって金融機関を規制する政策を決め、各国がそれを実施します。
FSBは、その動向が世界経済に大きな影響を与える多国籍巨大銀行を「世界的にシステム上重要な金融機関」(G―SIFIs)に指定し、監視を強めています。現在指定されているのは29行。日本の3メガバンクも入っています。巨大銀行が金融投機で損失を出し、実体経済に打撃を与えたり、政府や国民につけを回したりしないよう監視します。


FSBが監視対象に指定した「世界的にシステム上重要な金融機関」(29行)
米国シティグループ、JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、バンク・オブ・アメリカ、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン、モルガンスタンレー、ステート・ストリート、ウェルズ・ファーゴ
英国バークレイズ、HSBC、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド、スタンダード・チャータード
フランスソシエテ・ジェネラル、BNPパリバ、BPCE、クレディ・アグリコル
日本三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、みずほFG、三井住友FG
スイスクレディ・スイス、UBS
スペインサンタンデール、BBVA
中国中国銀行、中国工商銀行
ドイツドイツ銀行
オランダING銀行
スウエーデンノルデア
イタリアウニクレディト・グループ


米国でも規制案
G20の動きを受けて米国でも新しい金融規制のルールづくりが進められています。取りまとめの中心となっているポール・ポルカー元連邦準備制度理事会(FRB)議長の名をとって「ポルカー・ルール」と呼ばれるこの規制案は12月10日にFRBから最終案が発表されました。銀行の自己資金による投機的取引を制限するほか、銀行がヘッジファンドに出資することも規制します。米国の金融機関は激しく抵抗しており、例外規定を設けさせて規制を逃れようとしています。
このほかFSBはヘッジファンドなど「シャドーバンキング」(影の銀行)やデリバティブ(金融派生商品)に対する規制強化にも乗り出しています。
デリバティブ取引に対しては、債務不履行が金融システムの動揺につながらないよう担保の差し入れを義務づける国際規制が今後導入される見通しです。
G20は先進国、新興国が参加する機関であるため、IMFの投票権のように改革が言われながら、遅々として進まない課題があります。巨大金融機関は規制に抵抗しており、G20や各国政府が決めたルールを骨抜きにしようとする動きも根強くあります。
今求められているのは、世界の構造変化に対応した民主的な国際経済秩序です。

デリバティブ 日本語で金融派生商品と言います。金融商品の一種。債券、証券の価格や外国為替などの変動を指標に価格が上下します。金融市場の相場変動による損失を避けるための金融商品とされますが、実際には高いリスクで高収益を狙います。仕組みが複雑で、投資家がしばしば巨額の損失を出します。世界全体で600兆ドル(6京円)以上も契約されています。

(つづく)(3回連載の予定です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年12月18日付掲載