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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

労働講座 きほんのき⑤ 無期雇用への転換 有期雇用5年で権利

2017-04-29 10:41:14 | 働く権利・賃金・雇用問題について
労働講座 きほんのき⑤ 無期雇用への転換 有期雇用5年で権利

有期雇用で5年働いた労働者に無期雇用(正社員)への転換を企業に求める権利が来年4月から発生します。これを前に、いまのうちに有期雇用の労働者を解雇しようとする企業の動きが広がっています。職場で制度への理解を広げ、雇用を守る取り組みの強化が重要になっています。
この制度は、労働契約法が2012年に改定されて盛り込まれました。同じ企業で短期契約を更新して働き、雇用期間が通算して5年を超えた労働者にたいして、無期雇用への転換を企業に求める権利を与えるというものです(大学研究員などは特例で10年)。「無期転換申し込み権」あるいは「無期転換権」と呼ばれています。
法律は13年4月1日に施行されたので、これを起点に権利が発生する5年を迎えるのが来年4月1日です。短期契約を反復更新して働いてきた多くの非正規雇用労働者にとって、正規雇用に転換できる待望の時期です。




申し込みで成立
転換を申し込むとどうなるのでしょうか。
例えば1年ごとに契約を更新して働いてきた労働者が、通算5年になって権利を行使して期間の定めのない契約を企業に申し込んだとします。この時点で企業が申し込みを自動的に「承諾したものとみなす」(第18条1項)ことになります。
申し込みとはいえ事実上の通告といえる効力をもちます。企業は拒否できず、いまの有期契約が満了する日の翌日から無期雇用の契約が成立したことになります。
申し込みをした時点で無期雇用の契約が成立するのが重要です。申し込まれた企業側が無期雇用にするのを嫌がって、いま結んでいる有期雇用契約の満了を機に雇い止めしようとしても、すでに無期契約が成立しており、雇い止めは認められないということです。厚生労働省の通達(2012年8月10日付)は、これは解雇であり「権利濫用に該当するものとして無効となる」としています。
また通達では、転換申し込み権が発生する前に有期雇用契約を更新するさいに、申し込み権を行使しないことを更新の条件とするなどのケースについても、法の趣旨を「没却するもの」であり「無効と解される」としています。有期雇用契約が満了する前に契約を打ち切ろうとするのはそもそも「契約期間中の解雇」(第17条1項)であり、認められないとしています。
また企業側が「試験」と称する関門を設定して、無期転換する労働者を選別するケースがみられます。これは有期雇用で5年働いた労働者の権利を侵害する脱法的な手法であり、許されません。

重大な問題点も
一方、転換権の付与には、重大な問題点があります。
まず転換権を行使して無期雇用契約になったとしても、賃金その他の労働条件は、有期雇用当時のままでいいということになっています。最低賃金スレスレの時給で年収200万円以下の「ワーキングプア」(働く貧困)といわれる賃金を、無期雇用契約になっても改善する必要はないという扱いです。
さらに転換申し込み権が発生する5年の通算期間の計算が問題です。有期契約を通算する期間のあいだに契約が途切れている一定以上の無契約の期間があればリセットされるという規定があります(第18条2項)。一定以上という期間は6カ月以上です。
つまり通算する期間内に6カ月の空白期間があればそこでリセットされて、通算5年という条件が満たされないことになります。これを「クーリング」といいます。こういうやり方で労働者に転換申し込み権を与えないようにする企業の対応がいま横行しています。
これは不安定雇用を解消し、安心して働き続ける社会の実現という法改定の趣旨に反する行為です。この企業の行為にたいして労働者、労働組合のたたかい、世論のきびしい批判が重要です。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年3月23日付掲載


有期雇用で5年間働いた労働者は、無期雇用への権利がある。法律は4年前に成立したので、実際は来年4月1日から権利行使できる。
しかし、「クーリングオフ」ならず雇用の「クーリング」期間があると、5年間働いていてもNGってことも。
こんな骨抜きは許されない。